インターハイ予選決勝ー徳丸高校ー18

 城伯高校のディフェンス。


 徳丸高校はすぐにシュートに持ち込もうとしていた。安藤がスピードを上げてゴール下までドリブルで走り、そっとボールをリングに置いてきた。


 そこに快の手が伸びてきた。


 安藤がボールをリングに置いてくるとき、ボールは快に叩かれ、宙を舞う。


「逃すか!」


 孝也がボールを取る。


 孝也はボールを取った後、すぐにオフェンスに切り替え、ドリブルを低くして走る。


 徳丸高校も素早いディフェンスの切り替えだった。


 孝也はゴール下まで切り込んでいくことはできず、俺にパスを出す。このとき、俺についていた安藤に対して、風斗がスクリーンをかけに行く。スクリーンをかけに行ったことで、安藤の壁となり、スペースが空いた。


 このまま、ドライブでゴール下まで切り込んでいくのも良いだろう。でも、どうせなら。


 俺はひとつだけドリブルをついて、完全にフリーのところでスリーポイントを打った。


 シュッ


 綺麗な音を立てて、どこかに当たることなく、綺麗なアーチを描いて、ボールはリングの中に入っていった。


「よっしゃー!」


 安藤は呆然としていた。


「何故だ。前半は全く機能してなかったのに、後半で急に機能し出した」


 呆然としていた安藤は、オフェンスの切り替えが遅れた。


 スピードが出でいなくて、ドリブルも雑になっていて。


 俺はボールを奪って、そのまま、ドリブルをして、ボールをリングに置いてくる。


「レインアップだ!!」


 ベンチから慧の声が響く。


 ボールはリングの周りをくるくる回った。


「外したか……」


 俺は、これは入らないと感じて、すでにディフェンスしようと走り出していた。ところが、そのボールはリングの中へ入った。


「あっ……マジ?」


 俺は奇跡だと思った。リングの周りをくるくる回っていると、だいたい、落ちることのほうが多い。ラッキーだ。


「ナイシュー!」


 美香が笑顔で叫んだ。


「おう……」


 俺はなんだか恥ずかしくなって、美香から目を背けてしまった。


 笛が鳴る。


 3クォーター終了の合図だ。


 80-72


 9点差で城伯高校が逆転した。

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