インターハイ予選決勝ー徳丸高校ー17

 風斗は誰よりも声を出して、また、手でもっと盛り上げていこうと合図した。


「うぉぉぉぉぉ!」


 風斗の雄叫びが会場を響かせた。


「あいつ……」


 アーノルドはシュートを止められなかったことに、悔しさを感じた。


「どんまい」


 安見がアーノルドの肩をポンと叩いて、小声で呟く。


「すぐにディフェンス組み立てるぞ!」


 俺は走ってディフェンスに戻る。ディフェンスにつく前にシュートされたら、必ず得点にされる。


「ディフェンス!」


 俺はゾーンディフェンスの合図を出す。


 マンツーマンは人をマークすることに対し、ゾーンディフェンスは決められたエリアを守るディフェンスだ。


 ゾーンディフェンスには、いくつか種類がある。


 その中で選んだゾーンディフェンスは、1-3-1。


 スリーポイントから、フリースリーラインの手前まで守る人、1人、真ん中、フリースローラインに3人、ゴール下に1人というフォーメーションだ。


 安藤は横野へとパスを出す。


 横野はパスをもらうと、貴の合間を切り抜けて、シュートに行こうと考えた。ただ、貴がそれをさせない。


 ドリブルで抜けることもパスを出すことも難しい。


 あと3秒で24秒。24秒経ったら、ボールは城伯高校になる。


 横野は苦し紛れにシュートを打つ。


 同時に24秒の笛が鳴る。


 苦し紛れのシュートのため、ボールはリングに入ることはなかった。


「明らかに3クォーターから変わった」


 横野はフーと息を吐くと、気持ちを切り替えた。


 城伯高校のオフェンス。


 俺は攻め方を指で合図する。


 快、風斗、孝也、貴は頷く。


 本当はディフェンスされる前にシュートまで持っていきたいが、そこまではできなさそうなので、攻め方を切り替えた。


 快が安見の動きを封じに、スクリーンをかけに行った。風斗が台形の中へ入っていく。


 ノーマークになった。


 風斗は落ち着いてジャンプシュートを決めた。


「OK! 風斗!!」


 快は風斗を褒めると、ハイタッチした。


「よし、守り切るぞ!」


 風斗が手を叩いて鼓舞する。


 安見は困ったなという表情をして見せた。こうなるとは思っていなかったようだ。


 安藤からパスをもらおうとした安見。それを見逃さなかったのは風斗だ。


 風斗はボールをカットして、そのまま、ドリブルしていき、リングにボールを置いていった。


 城伯高校にまたしても得点が入った。

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