インターハイ予選決勝ー徳丸高校ー16

 風斗のダブルクラッチで、城伯高校に2ポイントが入る。ダブルクラッチは、高度な技。相手がシュートブロックをしようとするときに、ボールを持つ手を空中で変えてシュートする。


 風斗はすぐにディフェンスへと切り替える。


「ディフェンス!」


 風斗の声に、俺たちはプレッシャーをかけようと、徳丸高校の陣地からマンツーマンディフェンスにつく。


 安藤はドリブルするものの、ゴールどころか、城伯高校の陣地まで行くことができなかった。


「プレッシャーに負けてたら、NBAには行けないからな」


 安藤はゴールまで一気に駆け抜けることができないにもかかわらず、余裕があるみたいだ。ニヤリと笑っている。


 ドリブルする手を緩めた。何回かボールを突いた後、細かく速いドリブルで俺を抜いていった。


「行かせない!」


 俺は安藤の前に立ち、行かせないように壁を作る。


 パスも出せそうにない。安藤が困り果てていると、笛が鳴る。


 審判は左手でパーを作り、右で手で親指、人差し指、中指を立てる。


 この合図は8秒ルール。相手の陣地に8秒以内に攻めないといけない。8秒経っても攻められない場合は、相手ボールとなる。


「よし! 俺たちの番だ」


 快がボールをコートに入れる。


 俺はボールを受け取ると、素早く風斗へとパスを出す。


 風斗は既にフリースローラインまで走っている。


「いっけー!!」


 俺は叫んだ。信じるぞ。風斗なら入れてくれる。


 風斗はパスを受け取ると、一旦、落ち着かせて、ジャンプシュートをしようとした。


 このとき、シュートは絶対に打たせないと、アーノルドが戻ってきていた。


「ブロックされる!」


 風斗がシュートをしやすいように、快は素早く空いているスペースに走っていく。だけど、もう、風斗はジャンプしているし、アーノルドも手を伸ばし、ジャンプしてブロックしようとしている。


 風斗は、俺や快の声を聞きつつも、ニヤリと笑って、空中で態勢を低くして、アーノルドの脇を通り、ボールを軽くリングにポンッとおいてくるようにシュートした。


 そのボールはリングに吸い込まれていく。


「おぉぉぉ!!」


 風斗が吼えた。


 普通にジャンプシュートをしようとしていたけれど、アーノルドが来て、レインアップシュートに切り替えるとは。それも、空中で、シュートが決まるまで、床に足がついていない。


 どれだけ風斗は、滞空時間が長いんだ。


 俺らは呆然とするしかなかった。

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