インターハイ予選決勝ー徳丸高校ー14

 3クォーターの始まりだ。


 城伯高校は俺、快、風斗、孝也、貴。


 徳丸高校は安藤、アーノルド、横野、入間、安見。


 3クォーターはこの10人で試合がスタートする。


 アーノルドをどうやって止めればいい?


 そればかり考えるけど、背が高いから簡単に止められない。だとしたら、アーノルドがついていけなくなるくらいのスピードでプレーするしか、方法はない。


 俺はボールを持つと、すぐにパスできそうなスペースを捜す。


「快!」


 指でこのスペースに来いと合図。


 快は俺の合図が理解できたみたいだ。ディフェンスを振り切って、ボールをもらいに行く。


 快にボールをワンバウンドさせてパスした。次に快は空いているスペースを確保できるように、目で孝也に訴える。


「こっち!」


 快は孝也を呼んだ。


 孝也は快のほうへと走る。


「あれだな」


 孝也は快の意図を汲み取って、壁を作った。壁を作ったおかげで、アーノルドが一時的に動けない。


「チャンス!」


 快はニヤリと笑った。孝也のことを信じていた。孝也のポジションはシューティングガード。スリーポイントが得意。必ず入れる。そう確信している。


 孝也はフッと力を抜いて、慌てずにシュートを打つ。


「スリー!!」


 安藤が叫んでいる。リバウンドを取れという意味も込めている。


 この瞬間、時間が止まったような感覚。


 ボールが、ゆっくりとリングに向かっていくようだ。


 シュッ


 ボールはリングの中を通過した。


「よっしゃ!!」


 孝也は拳を胸に当てて喜びを爆発させた。


「オフェンスの時はとにかくスピードとスペースを作るために、今みたいにちゃんとスクリーンをかけられるようにしよう」


 慧はベンチから大きな声で、コートにいる俺たちに伝えた。


「ディフェンスもしっかりね!」


 美香の声も響いてきた。


「おう!」


 無意識に美香の声に返事してしまった俺。おかしいな。でも、美香に言われるとやってやるぜって気持ちになる。


 安藤がドリブルをしながら俺を睨みつけている。


「悪いけど、今のはまぐれだ」


 先ほどの孝也のプレーのことを言っている。生意気な奴だ。本当にムカつく。


 梅木も拓斗に挑発していたが、安藤も挑発しようとしている雰囲気だ。


「まぐれじゃないってことを証明してやる」


 俺はフーッと息を吐く。


 どうする? ドリブルかパスか。


 安藤はドリブルをしてきた。絶対に進ませない。安藤の動きを封じるために、大きく見せて、進ませなかった。


 大きく見せることで壁になるため、オフェンスからしたら邪魔になる。


 どんどん邪魔してやれ。そういう気持ちでディフェンスをする。


 なかなか離れないため、安藤は何もできない状態だった。


 24秒ルールのカウントダウンが始まる。あと5秒、4秒、3秒。


 24秒以内にシュートを打てなければ、城伯高校のボールになる。それも考えたが、ボールが奪えそうだ。スチールしてしまえ。


 俺は安藤の隙を見て、ここだ! と判断した。


 ボールを奪って、そのまま、猛ダッシュで、ドリブルし、ゴールまで突き進んだ。


 1、2、3でジャンプ。ボールをリングに置いてくる、レインアップシュートを決めた。


「きたー!」


 俺は、よくわからないけれど、美香に向かって拳を突き上げた。

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