インターハイ予選決勝ー徳丸高校ー13

 ハーフタイム10分。


 なかなか思うようにプレーをさせてもらえない城伯高校は、全員がイライラしてきていた。


「ハイスピードが大切。速いパス回ししていこう。ドリブルはなるべくしない」


 慧がベンチから見て、思ったことを口にした。


「もっと声を掛け合おう。声が出てない。声出していこう!」


 確かにそうだ。コミュニケーションがとれていない。バスケをする上でコミュニケーションは重要だ。


 コミュニケーションがなければ、どんなプレーをしたいのか、伝わらない。今まで練習でやってきたことが、全然できていない。練習と同じことをすればいいのに。


 それは、何故だ。何が引っ掛かっているんだ。アーノルドの壁か? 背の高いアーノルドを恐れているのか?


 俺は自問自答した。


 落ち着け、大丈夫だ。必ず、逆転できる。自分を信じろ。たくさん、高宮コーチに、教わったことがあるだろう。それを練習してきた。後は信じるだけなんだ。


 俺は長く息を吐く。


「俺たちはやることやって、ここにいる。だから、もっと信じよう!自分自身も仲間も」


 俺は自分に言い聞かせるつもりで、仲間にも伝えた。


 ベンチで黙って見ていた拓斗も、ひとりでプレーしてしまったことを反省しているようだ。


「全員で速いパス回しをして、空いているスペースを作れば、シュートチャンスも生まれて増える。それなのに、挑発に乗って冷静さを失ってた」


 俺は拓斗の肩をポンッと叩いた。


「そうだ、全員バスケだ。仲間を信じろ」


「よし! 32得点なら逆転できるよ!! 行こう!!」


 美香が元気づけてくれた。


「やっぱりもっと明確にするために、声を出そう。全員で」


 康人が手を叩いて鼓舞する。


「やるぞぉ!!」


 続いて、悟が喝を入れる。ベンチが元気よく声をかけてくれたおかげで、気持ちの切り替えができた。


「さぁ、そろそろ、後半だ。行くぞ!」


 慧が叫ぶ。


 慧と灯はファウルが3つなので、コートに出るのはリスクがある。まだ、3クォーター、4クォーターがあって、ファウルができない状況だ。あと、2つで退場となってしまう。そのため、まだ、コートに出さない。



 3クォーターの最初は、俺、快、貴、孝也、風斗でプレーをする。


 徳丸高校は、安藤、アーノルド、入間、横野、安見とメンバーを変えてきた。


 さぁ、3クォーターが始まる。

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