インターハイ予選決勝ー徳丸高校ー12

 城伯高校も徳丸高校も選手交代をして、プレーを再開する。


 第2クォーター、残り8分。


 逆転できるか、いや、逆転しなければ、インターハイ出場はできない。


 城伯高校のオフェンス。


 俺はパス回しを早くしようと、快にパスを出す。パスを出した後、台形の中に入り、快にパスをくれとアピールした。


 ちょっと遅かったか。快がパスを出せない。


 俺はスリーポイントラインのところまで戻りながら、貴にパスをもらいに行けと合図した。


 貴は快にパスをもらいに行く。


 快は貴にパスを出すと、貴は風斗にパスを出す。


「空いた!チャンス!!」


 孝也が風斗に訴える。


 風斗は冷静にジャンプシュートをする。


 ミドルシュート。ゴールから中間距離の位置で放つシュートだ。このシュートは成功するか、それとも。


 ボールはリングに弾き返された。


「リバウンド!!」


 ベンチから慧の声がする。


「うぉぉぉぉぉ!!」


 アーノルドの手が伸びてくる。


 負けじと、快も手を伸ばす。


 リバウンドを制したのは、アーノルドだった。


「速攻っ! runラン!!」


 アーノルドは英語で走れと叫んだ。


 その声を聞いた吉田は、走ってゴール下まで行く。


 アーノルドは吉田がちゃんとパスを受け取ってくれると、見越して、吉田よりも前にボールを投げた。


「run! run!! run!!!!」


 アーノルドはより、声を大きくして吉田に声をかけた。


「よっしゃ!」


 吉田は更にスピードを上げて走り、ボールを追う。


 ラインぎりぎりのところでキャッチした吉田は、態勢を崩した状態。体がよろめいた。それでも。


 シュートを放ち、綺麗なアーチを描いて、決めてしまった。


「やた!(やったー)」


 アーノルドはガッツポーズをした。


 ことごとくやられている。これを城伯高校がやらなくてはならないのに。


 速いパス回しが必要だ。速いパス回しでディフェンスを崩さないと。


 中へ入って外に出す、この繰り返しでパス回ししていけば、どこかで必ずディフェンスが崩れるはず。


 俺は手で皆に合図して、孝也にパスを出す。


 俺は孝也にパスを出した後、自ら、ゴール下まで切り込んで、パスをもらいに行く。でも、パスは出ない。


 俺がスルーしたら、台形の中が空く。快が入ってきて、孝也は快にパスを出す。快がボールをもらったとき、外に風斗がいる。スリーポイントラインのところだ。


「出せ! こっちだ」


 風斗がアピールする。快は、一瞬、シュートする動作を見せたが、アーノルドがいることを確認し、風斗へとパスをする。


 風斗は吉田のディフェンスを見て、パスを出すという姿勢を見せたものの、勝負に出た。


 1対1を仕掛けた。


 ゴール下までドリブルで切り込んでいくドライブ。ドライブをして、そのままの勢いでシュートを入れるつもりだった。


「ちょっと、遅かったか」


 タイミングがズレて、シュートが打てない。素早い判断で、ジャンプしている間に、シュートからパスへと切り替えた。


 パスをもらったのは、孝也。ゴールから中間距離の位置。


「リバウンド頼む」


 孝也の願いが通じるか。シュートを放つ。ミドルシュート。少し、距離があるため、アーノルドも簡単にボールは取れないはず。


 孝也の放ったボールはリングにシュッと入っていった。


 ようやく久しぶりにシュートが決まった。


 流れは城伯高校に来ている気はするが、まだ、すぐに徳丸高校に、流れを変えられそうな感じもある。


 第2クォーターが終了の合図が鳴る。


 この時点で得点は、28-60。


 32得点ビハインド。この差を後半の3クォーター、4クォーターでひっくり返すことができるのか。

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