インターハイ予選決勝ー徳丸高校ー11

「どんまい」


 シュートを打とうとして、ディフェンスの安見に突っ込んでしまい、オフェンスファウルをもらってしまった灯に、俺は声をかけた。


「あぁ、やっちまったな」


 灯は苦笑いしながら、舌を出す。


「ディフェンス行くぞ!」


 俺は気持ちを切り替えるために手を強く叩く。


 アーノルドにボールがある。ゴール下のシュートが打てる状況。


 アーノルドのシュートをブロックしようと慧が跳躍する。


 ピーッ


 また笛の音。


 審判の合図は慧のファウルをとった。


 慧はこれでファウル2つ目。


 アーノルドはシュートシチュエーションのときのファウルだったため、フリースロー2本が与えられる。


 アーノルドは2本のフリースローを簡単に決めた。


 膝を柔らかく使ってバネにして、ボールは、綺麗なアーチを描いている。


 城伯高校は再びディフェンス。


 なかなか、オフェンスをさせてもらえない状況だ。でも、こういう時は我慢の時間。


 必ずチャンスは来る。


 またしても立ちはだかるアーノルド。シュートを打たせまいと慧が奮闘している。


 慧はシュートを打たせる状況を作っていない。アーノルドとしては、パスをするしかない。


 アーノルドはドリブルをしながら、パスができそうなところを探っている。


 慧はボールを奪い取ることを試みた。


「スチール!」


 智樹が叫ぶ。同時に慧はスチールした。


 スチール成功。慧はボールを奪ってドリブルで、ゴール下まで行こうとした。


 また笛。


 慧はスチールをしようとしたときに、アーノルドと接触してしまい、ファウルをもらってしまった。


 シュートシチュエーションではなかったから、フリースローなないものの、慧はこれでファウル3つ。


 ファウルが5つになると退場だ。


 また、ファウルが重なり、チームファウルが5つになった。


 チームでファウルがトータル5つになってしまうと、シュートシチュエーションでなくても、ファウルをしたら必ずフリースローが2本与えられる。


 こうなってくると、フリースローは、ボクシングのボディーフローのようにジワジワと得点に響いてくる。


 アーノルドのフリースロー2本。


 これも見事に2本決めた。


 さらに、灯もファウルが積み重なってしまい、灯もファウル3つ。


 この後もファウルが続き、貴と智樹がファウル2つ。俺がファウル1つと、ファウルができない状況で、ディフェンスも遠慮がちになってしまった。


 このままではまずいと、高宮コーチは選手交代を決めた。


 メンバーが変わって、城伯高校は俺、快、風斗、孝也、貴でプレーすることになる。


 一方、徳丸高校も交代。


 本山、入間、吉田、笹山、アーノルドというメンバーだ。


「リバウンド、俺、任せろ」


 アーノルドは、まだ、慣れていない日本語で、力強く仲間たちに言い放った。


 俺ら城伯高校は、なんとしてでも、アーノルドを止めなくては。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る