インターハイ予選決勝ー徳丸高校ー10

 城伯高校のタイムアウト。ここで、俺たちは再び、動きを確認する。


「型にはまりすぎかもしれないな。もっと自由にバスケをしよう。新しい策略があってもいいし、攻め方に間違いはない。自分たちでどんなバスケができたら、楽しいか考えてみろ。楽しくやろうぜ」


 高宮コーチは勝つことだけに執着して、楽しさを忘れていると感じたらしく、策略というよりも、楽しくということを強調した。


 勝ってインターハイに行くということは目標。そのためにはどんな試合をするのか。考えることは凄く大事。ただ、これが楽しくなくなると、どんどん、マイナスのほうへと引きずり込まれていく。それは痛感している。


「確かに勝ちたい。でも、その勝つという気持ちが強すぎても、チャンスを逃すことになる。今、必要なのはプレーに集中すること。今に集中することだ。今、勝ちたいという気持ちだけで、プレーに集中していない。プレーに集中だ」


 高宮コーチは選手たちの背中をポンッと叩く。


「バスケが楽しいのって、プレーに集中しているから楽しいんだろ? なら、今、集中しないといけないのは、勝つ、勝ちたいではなく、プレーだ」


 高宮コーチに言われて、俺は、ハッとした。


 どんなプレーをする? プレーに集中できている? 背の高い選手に気持ちが無理だと思っていないか?


 心の中で自問した。


 タイムアウトは1分しかないので、あっという間に終了した。


 答えが出ないまま、コートへと向かう。


 城伯高校のディフェンス。


 アーノルドがゴール下でパスをもらい、シュートを狙っている。


「止める!」


 慧は、精一杯ジャンプしてアーノルドより高い位置で、シュートブロックをした。


 笛が鳴る。


 シュートブロックをしようとしたが、アーノルドと接触して、慧のファウルとなった。


 アーノルドのフリースロー2本。


 アーノルドは2本ともボールを沈めた。


 城伯高校のオフェンス。


 灯がドリブルでゴール下まで切り込んでいこうとしている。シュートまで持っていった。そっとボールをリングに置いてくる。


 ピー


 笛が鳴る。


 判定はオフェンスファウル。


 灯のファウルとなってしまい、徳丸高校のボールとなった。

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