インターハイ予選決勝ー徳丸高校ー7

 俺は拓斗と交代した。


 梅木の挑発に乗ってしまい、カチンときた拓斗は、ひとりプレーを続けてしまった。それがマイナスのプレーになり、確実に決められるシュートも入らない状態だった。


 そんなとき、高宮コーチにしては、珍しく厳しい顔で拓斗に告げていた。


「何故、ベンチに下げたのか考えてみろ」


 拓斗は悔しさをにじませる。何故、拓斗のプレーがダメだったのか、自分では、まだ、理解できない表情のまま、拳を握っていた。


「納得できない」


 拓斗はボソッと呟いていたが、コートに立った俺には聞こえなかった。


 城伯高校はディフェンス。梅木は拓斗が交代しても全然平気だという顔だ。


 梅木は横野にパスを入れる。


 梅木のパスをもらった横野は、すぐにゴールへと向きを変えて、シュート態勢に入る。


 横野がシュートをしようとしたとき、貴がすかさず、ボールを叩こうとした。


 タイミングが合ってしまったのか、ズレたのか、わからない。横野のシュートは外れた。


 ボールが宙を舞う。


「リバウンド!」


 俺が叫んだ。


 慧がリバウンドを取ろうと奮闘する。


 ただ、それよりも早く反応してボールを奪ったのは、アーノルド。アーノルドは身長が200㎝。簡単にボールを奪うことができる。


 ボールを奪ったアーノルドは、シンプルにジャンプシュートを決めた。


 灯が素早くボールをコートの中へ入れる。


 灯からボールを受け取った俺は、どんな戦略をするか考えるよりシンプルなプレーをしようと、智樹に、フリースローラインのところのスペースに来てくれと指示した。


 また、智樹が、ドリブルでゴール下まで切り込むドライブをするという予測も経て、慧、貴にスリーポイントラインまで広がれと指示した。


 そうすれば、たとえ、貴がシュートを打てなくても、灯のところにスペースが空く。


 そして、俺も空くと瞬時に考えた。


「コートを広く使え」


 俺は仲間に言うと、一斉に広く使おうと動き出し、スペースが空くようになってきた。


 俺から貴にボールが渡ると、シュートを放つ。


 シュートも打ちやすくなっている状況だったが、貴のシュートは惜しくも、リングに弾かれる。


 そこに現れたのは、アーノルド。身長のあるアーノルドは、軽くジャンプしただけで、簡単にリバウンドできてしまう。


 また、貴のシュートが外れたとき、アーノルドがリバウンドを取って、ロングパスを出し、スリーポイントラインにいた入間へとボールを渡した。


 入間はスリーポイントシュートを狙った。


 このシュートは、外れたものの、再び、アーノルドの手が伸びてきて、簡単にボールを取ってしまう。


「またか……」


 慧と貴でアーノルドをマークし、ダブルチームを作る。


 アーノルドにシュートをさせない。


「こっち」


 アーノルドは、横野にそこにパスを出すと合図をした。


 横野はアーノルドがパスしやすいように、フリースローより外側で、アーノルドの後ろへと移動する。同時にアーノルドキャッチすると、予測して横野は早めにボールから手を放した。


 横野はボールのほうへ走り、しっかりキャッチするとジャンプシュートをする。


 フリースローよりは遠いけれど、スリーポイントラインまではいかない、真ん中あたりで放った。ミドルシュートだ。


 これもしっかり決めてくるのか。


 俺は素早くシュートまで持っていこうと考えた。


「走れ!!」


 今度こそ、素早いプレーをしたい!


 俺はドリブルをして、センターラインまでボールを運び、慧がゴール下まで来たのを確認して、そのまま、慧へとパスをする。


 慧は跳躍し、ボールをしっかりと受け取ると、そのまま、ダンクをした。


「よし! アリウープ!!」


 貴は小さくこぶしを握り締め、ガッツボーズをした。


「そうだ、今のように素早いプレーができればチャンスはある」


 ベンチから高宮コーチがフッと笑った。

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