インターハイ予選決勝ー徳丸高校ー8

 徳丸高校に攻められ続けた城伯高校は、ようやく得点を入れた。


 その後は再び、アーノルドのリバウンドにより、徳丸高校に得点を奪われた。


 第1クォーターの終了を告げる笛が鳴る。


 さすがに徳丸高校の得点には追いつかなかった。


 10-32


 22点ビハインド。


 まだ、勝てない点数ではない。


 2分間のインターバルで、再度、確認をする。


「スピーディーにプレーをしていくには、オフェンスになったらすぐ走る。コートを広く使って、空いているスペースにどんどんパスで回していこう」


 俺はミニボードを使って、小さなマグネットを選手に見立てて、動かしながら説明する。


「そうだな。セットプレーをしていたら、背の高い、アーノルド、横野に簡単にボールを奪われる。だから、ディフェンスされる前にシュートまで持っていこう」


 慧は俺の言葉に頷いて、何故、スピードのあるプレーが必要なのか伝える。


 セットプレーは決められた型でプレーするやり方だが、それではボールを奪われる可能性が高くなる。


「よし! 城伯! 1、2、3」


「ハイ!!!!」


 慧の掛け声に続いて全員で気合を入れ直す。


 第2クォーターが始まる。


 城伯高校のメンバーは、俺、慧、灯、貴、智樹。


 ふいに達也のユニフォームに目を向けた。


 達也をインターハイに連れて行こう。達也も今、手術にリハビリと試練を乗り越えようとしている。一緒の仲間だ。離れていても心は同じはず。


 必ずインターハイに行こう!


 改めて強く感じた。


 第2クォーターの出だし、徳丸高校のメンバーは、安藤、アーノルド、横野、入間、安見。


 城伯高校のオフェンスから始まる。


 俺はなるべく早い展開で、シュートに持ち込めるように、パスで繋いでいこうと、智樹に目で、ディフェンスを引きつけろと合図する。


 右サイドのスリーポイントラインの位置にいた智樹が、俺のいる真ん中のスリーポイントラインの位置まで走ってきた。


 俺についている安藤を引きつけ、一時的に動きを封じる。


 智樹のいた右サイドのスリーポイントラインのスペースが空く。


 そこに、ゴール下にいる貴が、右サイドのスリーポイントの位置までやってくる。


 スリーポイントを打てるチャンス。


 貴はスリーポイントを放つ。


 俺のやりたかったプレーは、智樹にスクリーンをかけにきてもらって、空いたスペースに貴がパスをもらいに来て、スリーポイントシュートを打ってもらうことだ。


 形は上手くいった。


 だけど、貴の放ったスリーポイントは、惜しくもリングに嫌われてしまった。


 すかさず、飛び込んできたのはアーノルドだ。


 アーノルドはリバウンドを取ると、安藤へとパスをする。


 安藤は既に走っていて、シュートが簡単に打てる状況だ。


 城伯高校のディフェンスは追いつけない。


 安藤はゆっくりと1、2、3のリズムを刻んで、ボールをリングに置いてきた。


綺麗にシュートが決まる。


 ノーマークの状態を作ってしまい、簡単にレインアップシュートを決められた。

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