再びインターハイ予選7
2クォーターが始まる。
達也はケガのため、病院で診てもらっているので、この試合には出られない。そのため、智樹が入る。
また、慧はイップスのこともあり、2クォーターはベンチからのスタートだ。慧の代わりに快が入る。
一方、平塚高校もメンバーが交代した。
山木に代わり、
山木は、1クォーターで2ファウルしてしまったので、出すのは厳しい。まだ、2クォーター、3クォーター、4クォーターとある。
バスケは、5ファウルで退場だ。そのため、後のクォーターのことを考えて、1クォーターで2ファウルになってしまうと、試合を出す時間を少なくすることが多い。
始まりは城伯高校のオフェンスから。
智樹がコートにボールを入れる。
ボールを受け取ったのは、俺だ。
俺はゆっくりとドリブルをしていく。
「まだ、焦る時間帯じゃない」
俺は自分にしか聞こえない声で呟く。
まずい、緊張が強くなって焦りが出てきた。何度も言い聞かせて、心を落ち着かせる。
いや、メンタルトレーニングでも体幹トレーニングでもやったことがある。それは、お腹に腹圧をかけて呼吸することだ。
もう一度、お腹に腹圧をかけろ!
お腹に腹圧をかけるとは、つまり、お腹に力を入れること。お臍から指4本下にある丹田が膨らむイメージでやるといい。そう教えてもらったはずだ。
体幹も強くなるし、心のコントロールもできる。丹田には不思議なパワーがある。丹田に気持ちを持っていく。
集中だ!
俺は全体を見て、どういう展開にしていくか考えた。いや、正確には丹田を感じてどういう展開にするかを見ていると言ったらいいのか。頭ではなく丹田で考える感じだ。
「樹! ゴール下!!」
ベンチから慧の声がする。慧の声に俺は、フワッと、でも、高くボールを上げて、快へとパスする。
快にパスを出させないように、立川がボールを奪おうと高くジャンプした。
そのボールは更に高い位置で転がった。立川がジャンプしても届かない。
快はジャンプしてボールを受け取ると、そのまま、豪快にダンクシュートで決める。
「樹、ナイスパス! 快、ナイシュー」
美香が拍手を送っている。
「高くボールを上げたな。ちゃんと、あのセンターがとれるように調整して投げた」
立川は素直に凄いパスだったと感じたから、拍手で讃えた。
相手チームに面と向かって言われたので、俺はちょっと戸惑った。普段、褒められることがあまりないので、なんだか照れくさい。
でも、相手チームでも凄いプレーだと思ったら讃える。これがスポーツマンシップというもの。
最近、俺、自分のことで、いっぱい、いっぱいで相手のチームを讃えることをしてなかったな。ここは、スポーツマンシップをとらないと。
慧が声をかけてくれなかったら、快がノーマークになっていたことに気がつかなかった。
チームで戦っているんだ。チームでしっかりフォローし合わないと。
城伯高校のディフェンス。
と、その前に平塚高校がメンバー交代をする。
立川に代わり、
館野に代わり、
平塚高校の特徴はオールマイティーで、ポジションもひとつだけではなく、複数のポジションを担当している。
川野がドリブルでボールを運んでいき、津田に渡す。
津田がドリブルをして1対1を仕掛けたとき、智樹がスティールを狙った。
スティールとはドリブルしているとき、またはパスをしているときに、ボールをカットをすること。
智樹はボールを奪って、ドリブルで駆け抜けた。周りを見てパスもできるが、勝負できそうと判断した智樹は、そのまま、レインアップシュートを決めた。
「ナイス! 智樹!!」
貴が智樹に声をかける。
「皆で声を出そう!」
慧はベンチからコートに出るメンバーに声をかけた。
高宮コーチは、ここで慧に確認する。
「慧、試合に出られるか?」
「ハイ」
慧が返事をすると、高宮コーチが背中を叩く。
「よし、行ってこい!」
高宮コーチは慧を笑顔で送り出す。
「樹、ちょっと休め。ずっと出ずっぱりだからな。拓斗、樹と交代」
また、高宮コーチは更に、灯から風斗に交代、貴を康人と交代させた。
城伯高校のメンバーは、慧、智樹、拓斗、風斗、康人。
平塚高校のメンバーは、津田、江村、北野、安井、川野。
この10人でコートに立つ。
まだ、2クォーターは2分経ったばかりだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます