再びインターハイ予選6

 俺はなんとか平塚高校を止めようと、足りない頭でどうすれば良いのか考えた。


 圧倒的に平塚高校の有利になってしまう。


 1クォーター終了間際。


 あと1分切った。


 ここでできることはなんだ。


 ボールを持ちながら、ゆっくりと考える。


 まだ、焦る時間帯じゃない。あと、3クォーターもある。ここで、急いで得点を入れなくても良い。


 ドリブルしながらゆっくりと考えた。


「智樹!走れ」


 俺はそう言って、ここに走れと目で合図する。


 智樹が走ると、それに合わせて、智樹にパスする。


 智樹はそのまま、くるっと回ってシュート体制に入った。


 智樹には山木がついている。


 智樹は山木の脇からすり抜けて、シュートをした。


 見事に、シュッとボールはリングを通過したと同時に笛が鳴る。


「ファウル! バスケットカウント!」


 審判が合図する。


 シュートが入ったときにファウルになると、得点として認められるときがある。これをバスケットカウント。さらにフリースローが与えられる。


 智樹はシュートを決めて、さらにフリースローが1本与えられる。


 シュート動作をするときにファウルになると、2本のフリースロー、または3本のフリースローが与えられる。ただし、これはシュートが入らなかった場合、ツーポイントシュートのときは、フリースロー2本、スリーポイントシュートのときは3本。


 バスケットカウントとなった場合には、フリースローは1本与えられる。


 智樹は軽くボールを床に突きながら、呼吸を整える。時間をかけて、ゆっくりとボールを放つ。


 シュッ


 フリースローも綺麗に決めた。


「よし、ディフェンスだ!」


 俺はディフェンスにすぐ切り替えるため、声を出した。


 残りはあと10秒。


 もう、平塚高校は攻撃しない。2クォーター以降に勝負しようと考えているのかもしれない。


 1クォーター終了。


 20ー27で平塚高校がリード。


 2クォーターに入る前に、作戦会議を行う。


 たった2分しかない。2分の間にしっかりと動きを確認する。


「ディフェンス、しっかり守ろう。スクリーンかけにこられたとき、スイッチしよう」


 俺が声をかけると、ベンチで見ていた風斗が恐る恐る声をかけた。


「あの……」


「どうした? 遠慮なく言ってみな」


 風斗が何か言おうとしている。俺は力強く頷いた。


「今、樹先輩しか声が出てない状態なので、皆、声を出し合っていきましょう」


 勇気を持って話してくれた風斗。だけど、控えめで小声だった。


「いいんだよ、風斗。よく言った」


 俺は風斗の肩をポンと叩いた。


 ここで、高宮コーチが口を開いた。


「オフェンスの動きは悪くない。だけど、左側しか使えてない。もっとコート全体を使うにはどうする?」


 高宮コーチの問いに俺らは考えた。


「パスをもらおうと囮になったときやパスを出したとき、まずは外に開こうか。多分コートを使えている範囲が狭い」


 智樹がホワイトボードを使って、マグネットを人に見立てて、動かしていく。


「そうだな、開いてない。フリスローラインあたりでごちゃごちゃしてる」


 貴がホワイトボードを見ながら呟く。


 もうすぐ2クォーターが始まる。


 円陣を組んで、喝を入れ直す。


「城伯! 1、2、3、ハイッ」

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