再びインターハイ予選4

 城伯高校のディフェンス。


 ポイントガード、川野がボールを持って、チームを落ち着かせる。


 川野はどう出るか。


 俺は川野の動きを見極めようと隅々まで見た。


 川野はドリブルしながらニヤリと笑った。


 川野が俺を抜いてゴール下へと走る。


「貴! ダブルチーム!!」


 慧が叫んだ。


 俺と貴は川野のシュートを防ぐために、川野を囲んだ。


 川野はパスするしかなくなったが、パスができそうにない。そこを狙って、ボールを奪おうとした俺。


 そのとき、川野は後ろからやってきた山木にパスを出す。


 速い。いつ、達也を振り切って、ここまで来たのか。


 そう思い、山木を止めようとしたときだった。


 笛が鳴った。


 審判はファウルの合図を出している。


「どうした!?」


 灯は笛の音に一瞬、何が起こったのか、わからなかったようだ。


 俺もわからなかった。ファウルになるような場面ではなかった。


「達也!!」


 貴が真っ先に気がついて、達也のほうに歩み寄る。


 貴の声に俺、慧、灯が反応した。


「おいっ、どうした、達也!!」


 達也は倒れたまま、起き上がることもできずに痛そうにしている。


「達也!!」


 俺は達也の名前を呼ぶ。


 全く起き上がれない達也を見て、会場スタッフが担架を持ってきた。


 担架に乗せられた達也は、そのまま病院へと連れていかれた。


 先ほどの笛は、ボールのないところでのファウルだったんだ。でも、集中していて全く気がつかなかった。


「智樹、達也と交代だ」


 高宮コーチも達也がいなくなって、頭を抱えた。高宮コーチも予想外の出来事だと感じたのかもしれない。


「達也がいなくてもやることは同じだ。達也の気持ちと一緒に試合をしよう。試合に集中するぞ」


 高宮コーチは、達也のことが気になって試合ができないということを避けるために鼓舞した。


「はい!」


 スポーツは怪我が付き物だ。達也のことは心配だけど、一番悔しいのは達也だ。達也の分まで試合を集中してやろう。


 その前に先ほど、達也が怪我した場面の検証をすることになった。VAR判定だ。


 ファウルはファウルだが、これがパーソナルファウルかアンスポーツマンライクファウルか。


 パーソナルファウルは、体と体が接触して起こるファウル。アンスポーツマンライクファウルとは、スポーツマンシップらしからぬ、危険な行為をした時のファウル。略してアンスポという。


 審判が判定を見極めている間、円陣を組んで動きを確認した。


 5分くらい経ってから、審判が出てきた。


 審判はパーソナルファウルの判定を出した。


 山木のファウル。


 ボールは城伯高校のボールとなった。


 俺はチームを落ち着かせるため、ゆっくりとした動作でドリブルしながら、最初のポジションにつく。


 貴が安井のディフェンスを振り切った。


 いけると判断し、俺は貴にパスを出す。


 貴はそのまま、くるっと回ってシュートを放つ。


 ジャンプシュート。


 貴のシュートはゴールに嫌われる。


「リバウンド!」


 マネージャーの美香の声がする。


 俺もリバウンドを取ろうと、ゴール下へ走る。


 リバウンドを取ったのは、館野だった。


 館野はリバウンドをとってすぐに、ロングパスを出す。


 既にゴール下まで走っていた山木がボールをもらってジャンプシュートをする。


 山木の放ったボールは、フワッとリングに吸い込まれた。

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