新チーム12

 勉強をしようとしたとき、スマホの通知音がなった。


 俺は、スポーツニュースで速報が入ったとき、通知がくるように設定している。基本的には試合結果の速報だ。ちなみに、スポーツ〇〇というアプリを使っている。


 ただ、今はBリーグはシーズンオフだし、NBAはファイナルをやっているが、まだ、優勝は決まらない。


 通知を見てみると、俺は目を疑った。これは思いがけない速報だ。


 速報の記事を見てみると、そこには兄ちゃんのことが書かれていた。


 村野拓海むらのたくみNBAドラフトへ


 記事の見出しにはそう書いてあった。


 えっ? ドラフトに参加するということか?


 NBAの監督が指名される可能性があるということに、改めて兄ちゃんの偉大さを思い知った。


 ドラフトといえば野球が有名だが、実はバスケにもドラフトというものはある。


 今、NBAで活躍する八村塁選手も思えば、最初はドラフトで選ばれた。


 日本人がドラフトで選ばれてNBA選手になることは、難しい。基本的には下部組織に入って、そこからNBA選手を目指すことが多い。


 まず、ドラフトに参加できることに驚きだ。それだけ、兄ちゃんは有望なんだ。


 兄ちゃんは凄いなぁ。どのチームから指名されるかわからないけど、楽しみ。もし、NBA選手になったら、応援しないと。


 もちろん、指名されないこともあるかもしれない。でも、そんな時はそんな時で兄ちゃんのことだから、考えているはず。


 兄ちゃんのニュースを聞いたら、完全に勉強する気がなくなった。同時に不安がよぎった。


 兄ちゃんがNBAのドラフトを受け、きっと、また、いろいろと比較されるかもしれない。俺のプレッシャーもさらに強くなるだろう。


 でも、今度はメンタルトレーニングもやっていて、どうやって対処するかもわかっている。


 俺は兄ちゃんにLINEを送った。


 兄ちゃん、ドラフト受けることになったんだね。おめでとう。


 シンプルな言葉で伝えると、兄ちゃんから、すぐに返信が来た。


 ありがとう。樹、これから、また、おまえにも、俺のことで比較されたり、プレッシャーかけたりすると思うけど、樹は樹らしく頑張れ。


 兄ちゃんからのLINEを見て、よくわかってるなぁと感心した。俺のことをわかってる。きっと、このことで悩んでいたことも知ってるから、気遣ってくれたんだ。


 2分くらい経って、再び、兄ちゃんからのLINEが届いた。


 最近、バスケ部でメンタルトレーニングも取り入れているようだから大丈夫か。感情に振り回されるなよ。樹は感情に振り回されやすい。感情が出てきたら、ニュートラルに戻せ。感覚に耳を傾けるんだ。何かしている時の感覚に。そうすれば、感情のない心に戻る。そのときがチャンスだ。


 兄ちゃんにしては長い文章だな。でも、俺のこと凄く気にかけてくれていることがわかる。素直に嬉しい。


「わかったよ、兄ちゃん」


 ひとりごとを言って、ひとこと、LINEを送った。


 ありがとう。

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