新チーム11

 1年生が入ってきて、あっという間に1ヶ月が過ぎた。そろそろインターハイ予選に向けて、練習も試合を意識したものとなる。


 1年生が混ざって、本格的にゲーム形式の練習ができるようになった。


 ただ、基礎練習であるパス、ドリブル、シュートの練習、フットワークは欠かさずに。もちろん、メンタルトレーニングも。


 そのうえで、ゲーム形式の練習をする。あとは練習の質をどうしていくかだ。


 練習の質の問題は難しい。量も体力作りには欠かせないし、質も重要だ。


 このバランスは意外と乱れている。


 何度も途中で止めて動きを確認し、ゆっくりやって、理解できたら、また、ゲーム形式の練習。


 この繰り返しだ。質のいい練習は、きちんと基本を踏まえて、どこをもっと伸ばせばいいのか、どこを改善すればいいのか、きちんと修正することだ。


 そのためには先輩後輩関係なく、遠慮せずに共有し合うことが大切だ。


 でも、風斗は何か言いたそうにしているけど、遠慮しがちで言いたいことをしまい込んでいる。


「風斗、どうした? なんでも言っていいんだぞ」


 高宮コーチが風斗に声をかけた。


「はい……でも……」


 遠慮がちな風斗に、俺は肩をポンッと叩いた。


「何かあったら、バスケ以外でも相談に乗る。なかなか話せないこともあるだろうけどさ」


 風斗は目を丸くしている。まるで予想外のことが起きたみたいな。俺は無理に話させようとはしないけれど、話したいと思ったときに話してくれたら嬉しいな。


 短い間だけどバスケの仲間として一緒にやるわけだからな。


「ありがとうございます」


「あぁ、敬語じゃなくてもいいよ」


 俺はニッと笑って、風斗を和ませる。


 風斗は優しく笑った。


 きっと、遠慮してしまうのには理由があると思うけれど、それをまだ話せる段階ではないのかもしれない。


 でも、風斗は練習しているとき、何か気づいたことが必ずある。言おうか言わないか迷って、結局、飲み込んでしまう。それでは、自分のバスケができない。


 いつかは遠慮せずに話して欲しいな。


 その日もバスケの練習が終わって、それぞれが家に帰っていく。


 今日もバスケは楽しかったな。今度こそは必ずインターハイ優勝、ウィンターカップ優勝をしたい。


 本当は体育館からまだ出たくなくて、名残惜しい。まだまだ練習したい気持ちはある。もっと練習して上手くなりたい。


 だけど、高宮コーチの言うように、休むことも重要で休まなければ、ケガする。集中力も欠ける。休んだからといって強くなれないということはない。そのことを知って、まだ練習したいという程度で練習をやめ、休むように心がけている。


 まぁ、休もうとしているんだけど、結局、家に着くと、練習はしないものの、バスケットボールを触っているんだけどな。


 そういえば、勉強もしないと。教科書とノートを広げたとき、俺が言葉を失うほど驚いたことが起こった。

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