インターハイ予選12
4クォーターだ。泣いても笑っても、このクォーターで試合が終わる。本当の勝負だ。
3クォーターは、灯のブザービーターで終わったから、4クォーターのスタートは徳丸高校の攻撃から始まる。
徳丸高校は、4クォーターで、スタメンがコートに戻ってきた。
河田が俺の目を見るなり、ニヤリと笑っている。なんだか余裕だな。たったの2点差。そんなに焦る必要はないと考えているのか。
河田がチラッと宮田のほうを見た。それにつられて、うっかり、宮田のほうを見てしまった瞬間、河田に抜かれた。
しまった。目で動きがバレた。
慌てて、快と智樹が河田を止めに入るけど、すでに遅かった。河田は快と智樹をかわして両手で豪快にゴールにボールを叩きつけるダンクシュートをした。
「やられた……」
俺は明らかに河田の目につられた。高宮コーチに言われたばかりではないか。目を見ろと。完全に今のは俺のミスだ。絶対に取り返さないと。
その焦りからか、俺はとんでもないミスをした。河田に抜かれて悔しかったのもある。オフェンスで河田を抜いてやるという気持ちが強くて、強引に河田を抜いて、片手でボールを放り投げるフックシュートを打った。そのとき、河田を押し倒してしまった。当然、これはオフェンスファウルになる。
「パーソナルファウル!」
審判は、パーソナルファウルの合図をしたものの、ビデオで確認をする。このビデオ確認は、パーソナルファウルか、アンスポーツマンライクファウルか。パーソナルファウルならば、プレーヤー同士の接触したときのファウルで終わる。
でも、アンスポーツマンライクファウルとなると、故意にやったとみなされ、相手チームにフリースロー2本が与えられてしまう。更に相手チームのスローインから始まる。
俺は心を落ち着けようとしていた。アンスポーツマンライクファウル、略してアンスポ。アンスポだったらどうしようという動揺が脳内を駆け巡っている。完全に俺のミス。
審判のビデオ判定が終わり結果が出た。ファウルは、アンスポの合図だった。
この判断について俺は、文句は言わない。確かに強引に抜かそうとしたこともあり、意図的にぶつかっていったのは確かだ。アンスポでも仕方がない。気持ちを切り替えていこう。
河田にフリースロー2本と徳丸高校のスローインが与えられた。河田はボールをついて心を落ち着かせると、ゆっくりとボールを放った。軽く放っただけなのに、簡単にリングに吸い込まれていく。
2本目も簡単にフリースローを決められてしまう。徳丸高校はこのあと、スローインだ。
越野から河田にボールが渡る。今度こそ、河田の思い通りプレーはさせない。落ち着いて観察しろ。俺は言い聞かせて、じっくりと河田の動きを見る。
河田は滝へのパスを選択する。カットを狙える。スティールできるか。俺は手を出してボールを奪おうとしたけど奪えなかった。
河田は滝へのパスをしないで、また、自らドリブルをして抜いていった。俺は、それも想定して、素早く河田についていき、進行を塞いだ。シュートはさせない。
河田はジャンプでディフェンスをかわして、シュートに行こうとしたが、俺にブロックされると悟った。
ボールは、シュッと音を立てて、スリーポイントラインにいる越野へと投げられた。智樹はすぐに越野につき、シュートを打たれないようにしようとしていた。でも、越野は一歩踏み出して、ドリブルをすると見せかけて、また、スリーポイントのラインに足を戻すとシュートを放つ。
「リバウンドだ!」
智樹が叫んだ。このシュートは外れるシュートだと誰もが感じた。それなのに、ボールはリングギリギリにぶつかって外れるかと思いきや、それが入ってしまう。
それから城伯高校のリズムはどんどん崩れていき、徳丸高校に得点を大量に奪われる。
88-104
スコアボードを見れば、徳丸高校は100点越えの得点だった。
でも、まだ、16点差。時間はまだ7分ある。これならひっくり返せる。まだ、諦めない。読み間違えが続いて動揺している。落ち着け、俺。兄ちゃんならこんなとき、どんなふうに考えるだろう。まだ、諦めていない。今、元気がなくなっている。俺が盛り上げないと。どうすればいいんだ。
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