インターハイ予選11

 快がシュートを決め、素早くディフェンスへと戻る。


 徳丸高校のオフェンス。


 安藤がボールを支配する。


 安藤は1対1を仕掛けた。


 俺は抜かれないように、しっかりとついていく。


 安藤はシンプルに自分で行き、レインアップシュートをする体制に入った。


「させるか!」


 俺はシュートブロックをしようとして、手を出す。


 ピーッ


 笛が鳴った。


「ファウル!」


 シュートブロックしようとして、手を伸ばすも、安藤と接触し、ファウルを取られてしまった。


 安藤がシュートシチュエーションだったため、フロースローが2本与えられる。


 ファウル1。これは仕方ない。このファウルは良いとしよう。


 リバウンドをしっかり取らないと。


 安藤はポンポンとボールを叩くと息を吐く。ゆっくりと構えてシュート。


 シュッ


 綺麗にリングに吸い込まれた。


 2本目。


 シュパッ


 2本目も見事に決めた。


 さて、オフェンスだ。今度はどうやって動かすか。


 ゲームというのは、ほんの少しの流れで変わってしまう。


 俺は1対1を仕掛けたが、あっという間に安藤にボールを奪われた。


 スチール。読まれたか。


 すぐにディフェンスに戻ろうとしたが、間に合わなかった。


 安藤のレインアップシュート。


 ボールはゴールに優しく置いただけで、スーッとリングの中へ入っていく。


 俺はボールを素早く運んでいき、周囲を見回す。安藤の動きを見て、1対1を仕掛けるフリをした。


 灯が3ポイントラインで待っている。


 灯についている安見は背を向けている。


 チャンスかもしれない。


 俺は灯にパスする。


 灯はボールを持つと、3ポイントシュートを放つ。


 安見が気がついた時には、もう、ボールは手から離れている。


 シュッ


 ブー


 灯の3ポイントが入る音とブザーの音が同時に鳴った。


 今のはどちらが早かったか。


 ブザーが先かシュートが先か。


 審判が確認している。


 審判の判断は……


 審判は3ポイントが入ったという合図をする。


「ブザービーター!」


 灯の3ポイントが入ったと同時に3クォーター終了。


 78-80


 2点差。あと10分。簡単にひっくり返される点差だ。油断できない。


 最後のクォーターはどうするか。


「そのまま、智樹と快が行こう」


 高宮コーチの声に智樹と快が頷いた。


「快、俺が合図したら、3ポイントラインまで開いてくれ。場合によっては快が3ポイントを打つ!」


 俺は快にそう告げると、快は頷いた。


「わかった」


「皆もできるだけ大きく開いてくれ。中が狭くなりすぎている」


 俺はホワイトボードを使って動きを確認する。


「いいね、ちゃんと声出るようになったな。皆ももっと声を出せ。静かすぎる」


 高宮コーチは、手をパンパン叩いて声をかけた。


「コミュニケーションが大事だ」


 高宮コーチは、コートに出る俺たちの背中をポンと叩いて、送り出してくれた。


「慶、どこか調子でも悪いのか」


 高宮コーチは慶に声をかけていた。


 俺はなんとも思っていなかったが、高宮コーチの言葉を聞いて驚いた。


「なんと言ったらいいか、わからないけど、普段よりリバウンドが取りに行けないんです。体は動くはずなのに」


 慶の言葉は衝撃だった。そのことを高宮コーチは見抜いて交代させたのか。


 高宮コーチは慶が小学生の頃もバスケを教えているからこそ、わかったのかもしれないな。


 俺は慶のことを心配しつつも、自分がやるべきことをやろうと気持ちを切り替え、4クォーターに臨む。


「行くぞー、1、2、3!」


 俺たちは円陣を組んで、気持ちを上げるために声を出す。


 さぁ、4クォーターの始まりだ。

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