インターハイ予選7

 灯の3本目のフリースロー。


 ボールは、リングを弾いた。


 そのボールは、宮田の手に渡る。


「ディフェンス! 走れ!」


 慶が叫ぶ。


 急いでディフェンスに戻るも、宮田に速攻されて、間に合わない。


 宮田は、軽やかにレインアップシュートを決めた。


 貴がスローインで、達也にパスを出して、ボールをコートに入れる。


 達也は、貴からボールを受けると、すぐに俺へとボールを渡す。


 俺はゆっくりと相手コートまでドリブルする。


 ドリブルから、そのまま、慶へとパスを出した。


 慶はボールを受け取ると、何度かシュートフォームをしてみせた。


 その行動が吉本を狂わせる。


 シュートだと思って、吉本はブロックしようとジャンプしてしまった。


 慶はそのタイミングで、貴にパスを出した。


 貴がボール持った瞬間、囲まれた。


 吉本と滝のダブルチームで、貴を完全にマークしている。


 貴は左足を、左右、前後に動かしながら、シュートができる隙、パスを出す隙を窺う。


 吉本と滝は、貴の動きに合わせて動いている。


 貴はわずかな隙間を見逃さなかった。


 隙間が開くときが一瞬ある。


 その隙間を利用し、ドリブルですり抜ける。


 吉本と滝から離れると、すぐシュートモーションに入った。


 あまり体勢が良くなかったが、ジャンプシュートをする。


 貴はボールを放つと同時に後ろに下がりながらのシュートをした。


 フェイダウェイ。


 そのボールはボードに当たったものの、入らなかった。


 リバウンドは越野だ。


 越野は河田にボールを渡す。


 河田はすぐに吉本へパスをする。


 城伯は、ディフェンスの態勢が整っていない。


 慧は、まだ、吉本につくことができない。


 吉本はそのまま、豪快に両手でボールをゴールに叩きつけた。


 迫力のあるダンクシュートだった。


 1クォーター、残り2秒。


 スローインしてから、すぐにシュートを打たないと、得点がとれない。


 灯が、コート内にボールを入れる。


 ボールは俺が受け取る。


 あと、1秒。


 シュートで終わらせようと、強引にボールを投げた。


 自分の陣地のゴール下からのシュートだ。


 当然、ゴールに届くはずもない。


 放った瞬間、ブーと音が鳴った。


 1クォーターが終了。


 10分はあっという間だ。


 これから2分のインターバルがある。


 その間に作戦会議だ。


「シュートを入れられたとき、もっと早く戻ってディフェンスの態勢を作ろう」


 慧が全員に声をかける。


「あと、今の状況だと、中で入れられることが多いから、中を徹底して守ろう。中でシュートさせないようにしよう」


 貴が付け足した。


「ひとつ、ひとつのプレイが上手くいかない時は必ずある。そんなときでも、気持ちを切り替えて、できるかがポイントだ。盛り上げていこう」


 高宮コーチはそう言って、俺たちを送り出した。


 さぁ、2クォーターが始まる。


「行くぞ!!」


 俺は頬をパンッと叩いた。


 20ー18


 2点ビハインドだけど、まだ、これからだ。

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