インターハイ予選6

 達也がスリーポイントシュートを放つ。


 ボールがゴールに届くまでの瞬間が、やけに遅く感じる。


 ボールはリングに当たる。


 リングの周りを、ぐるぐる回る。


 シュパッ


 入った! 達也のスリーだ。


「よっしゃー!」


 達也が軽く拳を突き上げた。


「よし! ディフェンスだ!」


 慧が手を叩いて、ディフェンスに切り替えるようにと合図した。


 俺たちは慧の言葉にすぐにディフェンスに戻る。


 河田がドリブルをし、俺の様子を窺っている。


 さて、今度はどう出るかな。


 河田は宮田にパスを出す。


 宮田はボールを受け取ると、全体を見回す。


 灯が宮田の動きをじっくりと観察している。


 宮田はスーッと左足を前に出すと、一度、戻した。


 左足を戻すと、すぐに右から灯を抜こうとドリブルをした。


 灯と宮田の1対1の勝負。


 宮田が抜こうとしていくが、灯も負けてはいない。


 しっかりと進む方向を塞ぐ。


 ここまでの動作で、わずか1秒。


 この1秒の差は大きく、この1秒でどんな動作をするのか、バスケではものすごく大事になってくる。


 宮田はドリブルを止め、ゴールを見る。


 シュート動作に入る。


 ゴール下よりは遠い。でも、スリーポイントよりは中にいる。


 宮田はミドルシュートを打とうとしていた。


 ここで、灯はシュートブロックに入る。


「ここだ」


 宮田はそこを狙っていた。


 外にいた吉本にパスを出す。


 慧が吉本にスリーポイントを打たれないように、しっかりと守る。


 吉本は速く強いパスを滝に出す。


 滝へのパスを、貴がカットしようとして手を出す。


 ピーッ


「パーソナルファール」


 審判が試合を止めた。


 明らかに貴のファウル。


 滝へのパスをカットしようとしたとき、手だけ出したつもりだったが、滝を軽く押してしまった。


 貴、1ファウル。


「どんまい」


 俺は貴に声をかける。


 さて、もう一度、ディフェンス。


 徳丸高校のスローイン。


 河田にボールが渡ると、すぐに、吉本へとパスを出す。


 吉本はスーッと慧の脇を抜けていくと思いきや、越野へとパスを出す。


 慧は吉本が抜けてくると読み、吉本が踏み出したとき、同時に踏み出していて、ディフェンスがズレた。


 それを、吉本はうまく利用した。


 俺は敵ながら、吉本のプレーに拍手を送った。


 越野はスリーポイントを放つ動作をしながら、達也の様子を見ている。


 スリーポイントシュート動作からのドリブルで、シュッと達也をかわし、レインアップシュートに持っていった。


 このスリーポイントは外したが、リバウンドを取ったのは。


 吉本だった。


 吉本はそのまま、ジャンプシュートで簡単に入れてしまう。


「ナイシュー!」


 宮田が吉本に声をかけた。


「おう」


 吉本と宮田はハイタッチをすると、素早くディフェンスへと切り替えた。


 俺はドリブルをしながら、全員が整うのを待つ。


 さぁ、どうする。


 俺は河田の動きを見ながら、どのように展開していくかを考える。


 ふと、慧をマークしている吉本のディフェンスに隙が見えた。


 慧にパスを出せる。


 俺は慧にパスを出した。


 パスを出した後、慧がパスを出しやすいように、慧の後ろに走り、アピールする。


 慧は、背後に俺がいることを確認すると、パスを出す。


 パスを出したのは、俺にではなく灯だ。


 慧は、俺にパスを出すと見せかけた。


 吉本は完全に俺にパスを出すと読んで、反応が遅れている。


 そこを見逃さずに、灯へとパスを出した。


 これは、灯についていた宮田も、予想外だったみたいだ。


 バスケにはそういうところがある。


 ボールを持っている選手のディフェンスにフェイクすると、ボールを持っていない選手についているディフェンスも騙されてしまうことがある。


 ここが、バスケの面白いところなんだ。


 灯は、宮田との距離があることから、スリーポイントを躊躇なく打つ。


 慌てて、宮田がシュートブロックに入ろうとしたときだった。


 ピーッ


「パーソナルファウル!」


 宮田が強引にシュートブロックに入り、灯を押し倒したため、宮田は1ファウルをもらった。


 シュートモーションのため、フリースローが与えられる。


 灯はスリーポイントをしようとしていたため、フリースローも3本できる。


 息を入いて、軽くドリブルをして、心を整える。


 1本目のシュート。


 シュッ


 綺麗に決まる。


 2本目も綺麗にシュートを決めた。


 そして、3本目。


 ゆっくりとした動作で、シュートを放つ。

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