インターハイ予選3

 インターハイ予選まであっという間だ。


 つい、さっきまで28日なんて言っていたのに、1日、1日すぎるのが早すぎる。


 気がつけば、インターハイ予選前日になっていた。


 前日なので、そんなに激しい練習はしない。


 疲れが残ることを防ぐために。


 今日は調整をするのみ。


 基礎練習も軽めだ。


 あとは、いろいろなパターンでの動きを確認して、今日の練習は終わりだ。


 練習後、インターハイ予選の大会会場に持って行くものを準備する。


「いよいよだね」


 美香が声をかけてきた。


「おう、そうだな」


 俺は準備をしながら返事を返すと、慶が背中をバシバシ叩く。


「明日、よろしく頼むぜ。樹がしっかりしないと俺らはどんなプレイをするか迷うからな」


 意外と強く背中を叩いたな、慶。結構、痛いんですけど。


「あぁ、そうだな。指示できるように頑張るよ」


 俺は苦笑いだ。


「おまえ、緊張しいだからな、結構」


 貴が割り込んで、俺の頬を引っ張る。


「イテッ、何するんだよ」


 俺は貴の指を振り払って、睨む。


 まぁ、確かに緊張はあるんだけど。


 貴の言う通りだな。既にもう緊張している。


 少し、手が震えているのを見て、達也がツッコミを入れる。


「もう、緊張してるのか?」


「うっ……」


 俺は何も言えなくなった。


 図星でございます。完全にバレていたか。


 胃が痛くなってなってきた。


「まあ、こういうときにリラックスしろって言ってもできないから、緊張を、とことん感じるしかないな」


 灯は呆れた様子だった。


 皆、少なからず、緊張はあると思うが、灯は1番、緊張しないタイプだと思う。


 マイペースだからなのか。


 羨ましい。


 だけど、インターハイ予選で緊張してたら、インターハイ決勝はかなり、ヤバイのかも。


「でも、本当に緊張している中で、リラックスしようとしてもなかなかできないよな」


 貴は指で顎を撫でながら呟いていた。


「だから、緊張を認めたうえで、言い聞かせるしかないんだよね。大丈夫って」


 美香が話に加わる。


「そうだな、千葉レッドブルーの選手たちも言ってたしな」


 美香の言葉に俺は頷いた。


 一通り準備が終わると、忘れ物がないかをチェックする。


 明日、7時に駅に集合。これから、総合体育館に向かう。


 普段、予選は学校の体育館で行われることが多い。


 でも、インターハイ予選に限っては、スポーツセンターや総合体育館で行う。


 インターハイ予選は、県内で上位16位以内に入れば、インターハイに出場できなくても、ウィンターカップの予選に出られる。


 だけど、上位16位以内に入ることができない場合は、インターハイ予選で3年生は引退となってしまう。


 そのため、夏で最後の3年生もいるので、最後の大会は、スポーツセンター、総合体育館を借りて試合をすることができる。


 まあ、城伯高校には3年生はいないんだけど。


 だから、いつも以上に気合が入るし、緊張する。


 明らかに雰囲気が変わるから。


 国際大会で使われている体育館のように見えるんだ。


「よし、今日はもう帰ろう。明日に備えて、体を休めるんだ」


 高宮コーチの声が聞こえてきた。


「はーい」


 メンバー全員が声を揃えて返事をする。


 完全に息ぴったりで全員が大爆笑した。


 さぁ、明日はインターハイ予選だ。


 ベストを尽くすだけだ。

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