インターハイ予選4

 試合当日。


 朝早くから大きな荷物を持って、駅で待ち合わせ。


 何が一番、かさばるかって、それはボールだ。


 ボールを10〜12個くらいは持っていく。


 朝、7時。


 そろそろ、通勤も多くなってくる頃だ。


 電車も混雑してくる時間。


 ボールが3個入ったバッグが4つ。


 それに加え、ひとり、ひとり、大きなリュックを背負っている。


 大きな荷物で、場所をとってしまうのは、なんだか悪い気がする。


 他の乗客にとっては、邪魔だろうな。


 これから、この大きい荷物を持って、電車に乗ることになる。


「おはよっ!」


 達也が元気よく挨拶してくる。


 朝から元気だな、達也は。


「テンション高いなあ」


 俺は、達也のテンションの高さに驚愕する。


「だってさ、久々の大会だもん、楽しみでさぁ」


 達也はニコニコしている。


 本当に楽しみでワクワクしてるんだな。


 こっちまで伝わってくるよ。


「樹は、また、いつものように緊張か?」


 達也は、何故か、じっくりと俺の顔を見て来た。


「あっ? まぁ……」


 急に振られて、俺は曖昧な返答をしてしまった。


「顔が硬いぞ、樹くん!」


 その声は俺のほうへと、少しずつ近づいてくる。


 偉そうに口出したのは、灯だ。


「何を偉そうに言ってんだ、灯」


 俺は灯の頬を小突いた。


 今日もまた、全然、緊張してなさそうな顔だ。


 本当に驚くよ。緊張しないなんてさ。


「ってかさ、樹、俺が緊張してないように見えているだろ?」


 灯がじっと、俺を見ている。


 おい、なんだ。俺、そんな趣味ないぞ。というか、灯、俺の心を読んだのか。


「緊張してるのか?」


 俺は灯に聞いてみた。


「あのなぁ、俺だって緊張するぞ。しないわけないじゃん」


 灯の言葉に、俺は、ホッとしたような、意外だったような。


 驚きと安心が混ざっている。


 いつも、マイペースな灯でさえ、緊張するものなんだな。


 そんな会話をしながら、全員が来るのを待った。


 数分後、全員が集合する。


 全員、7時に揃ったのは素晴らしい。


 こういうときって必ず、誰かしら遅刻するからな。


 おっと、これは、偏見か。


 全員が揃ったところで、電車に乗り込む。


 うわぁ、混雑してる。


 電車通いの高校生もいるけど、俺は電車乗らないからなぁ。


 ぎゅうぎゅう詰めで揺られていく。


 おしくらまんじゅう、押されて泣くな


 そんな声が聞こえてくるみたいだ。


 いつも、朝からこんな状況なのか。


 これはストレスになるよな。


 朝からお疲れ様です。


 毎日、この人混みの中、通勤、通学は大変だ。


 そんなことを考えながら、電車から景色を見ている。


 緊張してきたな。


 どんな試合になるだろう。


 徐々に会場へと近づいている。


 いよいよ、始まるんだな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る