インターハイ予選2

 あと約1か月。


 久しぶりのインターハイ予選。


 どこまで俺たち、城伯高校のバスケが通用するのか。


 授業中、そんなことを考えながら、眠たいのを我慢していた。


 今は数学の時間。


 よくわからない公式や記号、数字が出てきて。


「こんな難しいの、社会に出てやらねぇだろ」


 思わず口にした。


 もちろん、先生に聞こえない声で。


 でも、もごもごと口を動かしていることに気がついたらしくて。


「村野、これはどうやって解く?」


 指名されてしまった。


「へっ?」


 俺は先生の話を聞いてなかったから、勢いよく立ち上がった。


 ガタンッ


 立ち上がったときの振動で椅子が倒れる。


「なにをもごもごと喋ってたんだ。ちゃんと考えろ」


 七三わけしている黒い短髪の先生に注意された。


「あぁ……」


 俺はため息をついて、椅子を元に戻し、座り直した。


「この問題は〇〇×△$……」


 先生は熱を込めて説明している。


 だから、どうなってるんだ。これがこうなって、あれが……ってやっぱり、難しい。こんなものわかるか!


 俺は数学の勉強を諦め、ノートにバスケコートのイラストを描き始めた。そこに小さな円を描き、選手に見立てる。


 細かく書き出し、戦略を考える。


 矢印を書いて、小さな円を動かしていく。


 ポイントガードとしての役割は……


 バシッ


 美香がおもいっきり、頭を叩いた。


「いってぇ……!」


 大きな声を上げてしまって、教室にいる全員が俺に注目した。


「何してたんだ! 村野! 集中しろ!」


 先生が席までやってきて、睨みつけている。


「はーい」


 そっけない返事をして美香を見た。


 頭を叩いた本人は、知らん顔。


 美香の奴、知らん顔してやがる。


 イラッとしながら、適当に先生の話を聞いて、授業が終わるのを待った。


 それから、10分後、ようやくチャイムが鳴る。


 終わったー。やっとバスケができ……


「樹、また、バスケできなくなるよ。勉強しないと」


 美香は体育館へ行こうとする俺を引き留めた。


「へい、へい」


 軽く促すと、すぐに体育館へと向かう。


「ちょっと、樹!!」


 美香の声が聞こえたが、無視。


 体育館に来るなり、さっさと準備してシュート練習をする。


 まだ、全員揃うまで時間がある。


 ちょっとした時間も練習しないと、俺は追いつけない。まだまだ、下手だからな。


 そのうち、全員が集まって来て練習が始まる。


 いつものように基礎練習を行う。


 みっちり3時間、練習。


 インターハイ予選までカウントダウンが始まっている。


 あと28日。

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