インターハイ予選

 千葉レッドブルーというプロ選手チームとの練習から、1週間経過した。


 そろそろインターハイ予選が始まる時季が近づいてきている。


 ゴールデンウィークが始まる。


 すっかり、少し運動しただけで汗ばむくらいの暑さになっていた。


 つい、この間までちょうどいい暖かさだったのに。


 もう、初夏の季節。


 この時季になると、約1か月でインターハイ予選が始まるため、最後の追い込みと調整をする。


 バスケ部にとっての大きな大会だ。


 一応、俺ら城伯高校もインターハイ予選にエントリーしている。


 まだ、再始動したばかりで、まだまだやり直している途中。


 インターハイ予選でどのくらい、俺たちのバスケが通用するのか、わからないけれど、ベストを尽くしたい。


 練習が終わり、高宮コーチから告げられる。


「来月、13日からインターハイ予選が始まる」


 俺たちは高宮コーチの言葉に、元気よく返事をする。


「チームがまとまってきて1ヶ月ちょっと。まだ、チームを作り上げたとは言えない。でも」


 高宮コーチは少し間をおいて続ける。


「経験が大事になってくる。だから、インターハイ予選を経験しよう」


 インターハイ予選。


 誰もが憧れの舞台、インターハイ出場をかけて戦う。


 でも、城伯高校は、1年間、谷牧の問題のこともあって、インターハイ予選にすら、出場することは叶わなかった。


 俺たちにとっては、久しぶりのインターハイ予選だ。


 そんなに甘くないことはわかっている。


 もしかしたら、インターハイ予選、1回戦で負けるかもしれない。


 それとも、勝ち続けるかもしれない。


 試合はどうなるかわからない。


 バスケは0.1秒でも、ひっくり返ることがある。


 それでも、インターハイ予選にエントリーが決まって、嬉しさとワクワク感が、心の中を占めていた。


 早く始まらないかな。


 おっと、そのためには、ちゃんと準備しないとな。


 千葉レッドブルーの選手たちも言っていた。


 しっかり準備をすることが大事。


 でも、その準備は、あらゆる場面を想定してすること。


 ミスした時はどうするか、思う通りに行かなかった時、どうするか。


 そこまで準備することが必要。


 俺は、そんなことを考えながら、帰る支度をした。


「嬉しそうだねっ」


 美香が勢いよく、肩を組んでくる。


「おぉ、美香か。なんだよっ、急に」


 美香はニコニコしている。


「久々に見たよ、こんなに嬉しそうな顔する樹!」


「そうか?」


 俺はキョトンとして、美香を見ている。


「樹らしさ、取り戻してきたね」


 美香はウインクする。


「お、おう……」


 俺は、なぜだかドキッとした。


 帰り支度が終わると、俺と美香は一緒に学校を後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る