プロ選手との練習9

 俺たちは千葉レッドブルーのプロ選手と、5対5の最中。


 Aチーム、樹、慶、貴、依田選手、笹本選手、相内選手。


Bチーム、黒崎選手、並木選手、灯、達也、智樹、拓斗、快


 というチーム編成だ。


 相内選手、拓斗、快は、5対5を見守っている。


 これから、Aチームの攻撃だ。


 俺は、プロ選手と一緒に練習をすることに、緊張しながら、どういう展開にしていくか考えた。


 フーッ


 俺は息をゆっくり吐いて、ひと呼吸おいてから、ドリブルをする。


 依田選手がパスをくれとアピールしている。


 灯が与田選手にパスを渡すまいと、与田選手にピッタリとくっついている。


 それでも、依田選手は灯より前に出て、ボールを欲しがった。


 依田選手にパスをすることができる。


 今なら、ちゃんとボールを受け取れる位置に依田選手がいる。


 そう思ったから、俺は依田選手にパスを出す動作をしようとしたときだった。


 依田選手が慶とアイコンタクトをとっている。


 依田選手は、パスをもらうとフェイクをかけようとしているのか。


 慶にアイコンタクトをとってから、依田選手は、俺に目で訴えかけた。


 俺は迷わずに、依田選手へのパスをやめた。


 依田選手とすれ違う形で、慶がパスをもらいにやってくる。


 ここだ!


 俺は慶にパスをする。


 依田選手とすれ違った時に、ディフェンスが乱れて、慶がノーマークになった。


 ボールを受け取ると、そのまま、慶はジャンプシュートを見事に決めた。


 依田選手は、慧がジャンプシュートを決めると、にっこりと笑った。


「よく読めたな、ナイス判断だった」


「ありがとうございいます!」


 俺は嬉しくなって、元気よくお辞儀をした。


 依田選手が爆笑している。


 そんなに可笑しかったか。


 なんて考えていたら、依田選手だけでなく笹本選手も、5対5を見ていた相内選手も笑っている。


 笹本選手は俺の肩を、ポンッと叩いた。


「マサ……依田のアイコンタクトをしっかり理解できるのは凄いよ」


 俺は、笹本選手に肩を叩かれて驚いた。


「えっ……」


 笹本選手は、何故か吹き出していた。


 俺、そんなに変なのか。


「緊張しすぎだよ。マサはさ、俺たちでさえ、アイコンタクトとっても読めないことしてくるから、対応できないんだよな」


 笹本選手は、緊張している俺を見て笑っているらしい。


 いやいや、俺たちからしたら、プロの選手と練習できるなんて、ありえないことだし、憧れの選手なんですけど。


 緊張するのは当たり前じゃないのか。


 というツッコミをいれたかったが、心に止めておいた。


「まぁ、良い緊張を持つのは良いんだけどね、悪い緊張になっちゃうと良いプレイができなくなる」


 相内選手がニヤニヤしている。


 俺は図星を突かれて、ドキッとした。


 今、とんでもなく汗が流れている。


 こんな、凄い選手と練習しているということが、夢のような光景だ。


 緊張と嬉しさといろんな感情が入り混じっている。


 同時にプロ選手と練習するというのは、自信にもなる。


 本当に高宮コーチに感謝だな。


 ところで、高宮コーチって、人脈が凄いあるけど、一体、何者なんだ。


 それから、試合形式の練習を何度か繰り返し、千葉レッドブルーの選手との合同練習の時間は終了した。


 あっという間の時間だった。


 高宮コーチも満足そうな顔をしている。


 その後、練習は終わったが、千葉レッドブルーの選手達の時間があるとのこと。


 そこで、各自、聞きたいことを聞いて、アドバイスをもらう時間をくれた。


 高宮コーチも承諾した。


「いい機会だ、疑問に思うこと、思う存分聞きな」


 えっ、凄くないか。こういう時間も作ってくれるのか。

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