王者、福岡私立富滝高校との練習試合12

 1分のインターバルを挟んで、練習試合が再開する。


 インターバル中に次に行う練習試合のメンバーが高宮コーチから発表された。


 ポイントガードは拓人、シューティングガードは智樹、センターは快の1年生。パワーフォワードは貴、スモールフォワードは灯の2年生の構成で行う。


 パワーフォワードとスモールフォワードは、1年生がいないので、再び、貴と灯が出ることになる。


「さぁ、行こうか」


 高宮コーチは手を叩いて言う。


 メンバーを見ると、富滝は2年生、1人だけ1年生がいる。


 ポイントガードは南薫みなみかおる、スモールフォワードは宮内聡みやうちさとし、シューティングガードは高村蓮たかむられん、パワーフォーワードは杉村陸翔すぎむらりくと、センターは元森。


 高村が1年、元森は3年生、あとの3人は2年生だ。


 インターバル1分が過ぎた。


 練習試合、2試合目が行われる。


 ジャンプボールは快と元森。


 審判からボールが上がる。


 ティップオフ。


 マイボールにしたのは、富滝だった。


 高村がボールを取り、まずは、南にボールを渡す。


 南はボールを持つと、素早く周りを見た。


 拓斗が南の動きをじっと見ている。


 南の動きは読みにくいな。これじゃ、拓斗も悩む。


 俺ならどうするだろう。


 俺も南の動きをよく観察する。


 南もパスはできそうにないと思ったのか、ドライブしていこうと判断し、ドリブルをした。


 低く速いドリブルをしているため、普通なら、拓斗を抜いていくと読む。


 でも、南をじっくり観察していると、腰がドライブしようとしている方向を向いていない。


「拓斗、南はドライブをしない!」


 俺は拓斗に叫ぶ。


 遅かった。拓斗は完全にドライブしてくると思って、少し足を引いてしまった。


 その隙が南にとっては好都合だった。


 南から高村へとあっさりパスが通ってしまった。


 高村はフッと踏み出して、ドリブルをするフリをしてスリーポイントを放つ。


 智樹が高村のシュートを防ごうと手を挙げた。


「しまった!」


 智樹の声がする。


 高村はスリーポイントを打つわけではなかった。


 またしてもフェイク。


 スリーポイントを打つフリをして、いつの間にかフリースローラインにいた南にパスをした。


 南はそのままジャンプシュートをした。


「相手のほうがまだまだ上手だな。騙すことに関しては」


 高宮コーチは呟いた。だけど、余裕があるのは何故だろう。


 俺は高宮コーチを見て不思議だった。


 城伯のオフェンス。


 さっき、拓斗は完全に騙されて悔しかったのか、南を睨みつけている。


「冷静になってない気がする」


 ベンチで見守っていた慧が拓斗を見て、ボソッと答える。


 確かにそうだ。俺と同じことを考えていたか。


 拓斗は周りを見て、瞬時に貴にパスを出せると判断した。


 貴にボールを頭から投げる。


 オーバーヘッドパス。


 貴は杉村が狙っていることを悟り、拓斗に無理だと合図を送る。


 拓斗は南に取られるもんかと無理やりに貴へとパスを送った。


「完全に南にプレッシャーかけられてるな」


 俺は思わず口にしてしまった。


 たった数分前、俺もそうだった。


 ベンチから見るとわかる部分もあるんだな。


 無理なパスから、貴はなんとかボールを取ろうとしていた。


 杉村がパスカットをしようとしている。


 形はジャンプボールのときと同じだ。


 どちらがボールを取るか。


 貴はカットされることをわかっていたから、杉村とのタイミングをずらす。


 杉村はボールが取れると確信したらしい。その確信が油断となった。


 貴はそこを狙って、ボールを奪い取る。そして、そのまま、高いジャンプ力で、ゴールにボールを叩きつけた。


 豪快なダンクシュートだった。


 身長はバスケ選手にしては小さい。


 178センチしかないが、並外れたジャンプ力でダンクができる。それが貴だ。


 拓斗は貴に救われたな。


 本当ならパスは出さない方が良かった。


「拓斗、落ち着け」


 貴は一言だけ伝えると、ディフェンスへと戻る。

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