王者、福岡私立富滝高校との練習試合10
俺は再びコートに戻る。
武田は俺を見るなり、バカにしたような笑みを浮かべた。
「戻ってきたか、下手な奴が」
「お前のおかげで目が覚めた、ありがとうな」
俺は感謝するものの、皮肉っぽく言った。バカにしているのも今のうちだ。黙らせてやる。
俺はドリブルをしながら、全体を見渡す。パスはできそうだが、マークが固い。
選択した策は、自分でドライブ。ゴール下まで切り込む。そこには元盛と木谷がダブルチームで、俺の進行を防いだ。
俺はチラッと全体を見る。すぐ後ろに灯がいる。パスが出せそうにない。
そこに達也が藤田のディフェンスを振り切って、ノーマークになっている。
武田に見えないように視線はゴールを見て、達也にパスを出した。ノールックパスだ。
達也はしっかりとボールをキャッチすると、達也がドライブしてゴール下へ走る。そのままレインアップシュートを放つ。
藤田は達也に追いつくことができず、達也のシュートは柔らかくゴールに置いてい来るようにしてボールがシュッと入った。
「よっしゃー!」
俺は小さくガッツポーズした。
ガッツポーズの後、達也がやってきて、お互いに体をぶつけ合って喜んだ。
「やればできるじゃん。明らかに動きが違う」
武田の声が聞こえたような気がするが、何を言ったのかわからなかった。
「ディフェンスだ!」
慧は俺に親指を立てて合図すると、すぐに手を叩いてディフェンスするぞと促す。
俺は武田のマークにつく。
武田の表情は曇っている。先ほどのプレイで少し動揺したのかもしれないな。
武田はパスが出せそうにもないと判断し、ドリブルをする。低く速いドリブルで、俺の脇を抜けようとする。
フッとペースが変わったような気がした。なぜか、武田の動きがスローモーションに見えた俺は、スチールした。ドリブルしているときにボールをカットする。
そのままドリブルで、ゴール下までいき、流れでレインアップシュートでシュートを決める。
「カウンター!」
武田は自分の判断ミスで、ボールを奪われて呆然とした。
気がつけば、30-26と、城伯は、4点ビハインドまで詰めていた。
残りはあと1分。
ここからどういうふうに展開していくか。意識を額に集中させた。このほうが俺にってイメージが湧いてくるような感覚がある。
再び、ディフェンス。
武田は俺の目を見て、今度は素早く吉野にパスを出す。
灯と吉野の勝負。
吉野は1対1を仕掛けた。
「ダブルチーム!」
俺が声をかけたその前に、灯は吉野を抜かせなかった。粘り強いディフェンス。
吉野は無理だと思い、元盛へとパスを出す。元盛はバスを受け取ると豪快にダンクを決めようと、ゴールに突っ込んだ。
ピピーッ
笛がなる。
ファウルの合図だ。
元盛が突っ込んだとき、慧が倒れた。
このファウルはオフェンスファウル。元盛のファウルだ。
それも、アンスポーツマンライクファウル。
意図的に相手に体を接触させたり、ユニフォームを掴んだりするファウル。
元盛のファウルは、肘が慧の顔面に当たっていた。この行為が意図的と判断されてしまった。
「アンスポ?!」
元盛が呟く。
富滝のメンバー全員が呆然とした。
アンスポーツマンライクファウル、略してアンスポをとられた場合、相手にフリースロー2本、さらに相手のボールになる。
俺もアンスポになるとは思わなかった。でも、ファウルをしないといけないくらい富滝を追い込んだということだ。
「慧、大丈夫か?」
俺は慧に話しかけると、慧はニヤリと笑った。
「大丈夫」
慧はフーと息を吐くとフリースローラインに立つ。
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