王者、福岡私立富滝高校との練習試合6
羽田空港から、およそ2時間後、福岡空港へとやってきた。
天気がいい。このまま観光したいくらいだ。でも、少し暑さも感じる。初夏だ。
福岡空港から20分くらい歩いたところに、
福岡の空気を感じながら、俺らは富滝高校へと向かった。
富滝高校は私立だけあって学校も豪華だ。設備がしっかり整っている。
体育館に入るなり、空調が効いていて驚いた。この環境は凄いな。猛暑の日でも極寒の日でも快適に練習ができる。
急にワクワクと不安、緊張が込み上げてきた。手が震えている。
その状況を察した美香は、他の皆には気づかれないように、そっと俺の手を握った。
「美香?」
美香はニッと笑って見せた。
「大丈夫!」
俺は美香の手をそっと握り返して合図した。
「ありがとう」
俺たちは更衣室を案内されて、ユニフォームに着替えた。
といっても練習試合なので、普段の練習着にビブスだ。
ビブスの番号は本番の試合の時と同じ番号だ。
俺は5番、慧が4番、貴が6番、達也が7番、灯が8番、拓斗が9番、智樹が10番、快が11番だ。
着替えが終わるとウォーミングアップを始める。普段と変わらないウォーミングアップ。
ウォーミングアップ中に富滝高校のキャプテンが慧のところにやってくる。
「城伯高校は初めましてですよね、今日はよろしくお願いします」
礼儀正しく慧に挨拶したのは、富滝のキャプテン、
城伯高校は全国的に強いチームとはいえないから、富滝高校にとっては知らないだろう。
でも、富滝高校は強豪で、全国に知れ渡っている。だから、バスケをしている人なら、誰もが知っている。選手の名前も。
「初めまして。こちらこそ、よろしくお願いします」
慧も丁寧にお辞儀をして挨拶した。
挨拶後、藤田も富滝のところへ戻って、ウォーミングアップをした。
今回は練習試合なので、正式な試合とはちょっと違う。正式な試合だと4クォーターあって、各クォーター10分で行う。
この練習試合は1試合10分。あとは正式な試合と同じルールで行う。
富滝は藤田を中心に集まっていて話し合っている。
俺たちも集まって話し合いをした。
高宮コーチは、俺たちが話し合いをしている間、まったく口を出さずに、ただ見ているだけだった。
自分たちで考えろっていうことなのかな。高宮コーチが黙っていると、ちょっと不安になるのは俺だけか。
ふと、富滝高校のほうを見ると、コーチが話している。富滝高校のコーチといえば、
「樹、試合を動かすのは樹だ。どう動いて欲しいか指示を頼むぞ」
慧がバシッと俺の背中を叩く。
「お……おう……」
俺は意外と強く叩かれて声が上ずった。なんか、最近、よく背中を叩かれるような。美香にも何回かやられたし。
俺たちは円陣を組んで気合を入れた。
「行くぞ!」
慧が叫ぶと、全員で
「オー!!」
と、大きな声を出した。
さぁ、始まるぞ。
凄く緊張してきた。
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