凄腕のコーチがやってきた11

 俺はワクワクした気持ちを抑えられないまま、公園へとやってきた。


 高宮コーチはまだ来ていない。


 高宮コーチがくるまで、俺と慧は1対1をする。


 慧がディフェンス。俺がオフェンス。


 慧は早速、ピッタリとついてくる。


 慧を抜くスペースがない。そのくらいディフェンスにプレッシャーをかけられている。


 俺は一息ついてから、ドリブルをした。左に1歩踏み出しまた戻す。


 今度は右に1歩踏み出す。


 慧が反応している。これでは抜くことはできない。


 また1歩、右に足を出す。同時に、右手でドリブルしていたボールを背面に通して、左手にボールをチェンジしてドリブル。


 瞬間、スペースが空いた。


 右から抜くと読んだか、慧は右から抜けるのを防ごうと右へと1歩移動した。


 その時に空いたスペースを見逃さす、左から慧を脱いっていった。そして、そのまま、1、2のリズムで踏み込み、3でジャンプでシュート。


 これがレインアップシュート。


 リングにシュパッと入っていく。


 ボードやリングの枠に当たらず、そのままリングに、シュッと入るシュートは気持ちが良い。あのシュッという音がたまらない。


「あっ、やられたー!! うまく騙したな」


 慧はニヤリと笑っている。


 今度は慧がオフェンス。


 俺はディフェンスの構えをして、慧の動きをじっと見る。


 慧はフェイクを入れずにドリブルでゴール下まで切り込んで来ようとする。


 俺はゴール下まで切り込まれないように、慧の進行を防ぐ。


 慧は切り込めないと思ったか、足を止めてドリブルをする。


 少し落ち着かせてから、右に小幅くらいに横に移動した。


 すると、ドリブルを止めて足を戻し、そのまま、ジャンプシュートをする。


「げっ、思わず動いちゃった!」


 俺は右に動いたから、そのまま抜けていくのかと思った。


 その読みは外れた。そこからシュートか。


 慧の打ったシュートは、スリーポイントラインよりは中、フリースローのラインよりも外の距離からのシュート。ミドルシュートだ。


 見事に、ボールは、シュッと、リングに吸い込まれた。


 本来、慧はポジションがセンターなので、ゴール下のシュートが多い。


 だけど、慧はオールラウンダーで自分のポジション以外にもでき、ミドルシュートも得意としているんだ。


「まぁ、バスケは騙し合いだからな」


 慧はフェイクが上手く言ったことにご満悦だ。


 俺は正直悔しい。


 バスケから離れると、かなり甘えているようなところがある慧。


 バスケになるとポーカーフェイスというか、いつもクールだ。そのギャップが女子にはモテるみたいだが、俺には腹が立つ態度だ。


 それにイケメン。


 すべてにおいて俺は負けている気がする。


 あれ? 慧に嫉妬しているのか。俺は。


 1対1を遊び感覚でやっていると、高宮コーチがやってきた。


「高宮コーチ!」


 慧は大はしゃぎ。やっぱりガキだな、慧は。


 今にも高宮コーチに飛びつきそうな勢いだ。


 そんな慧に高宮コーチは呆れている。


「おまえ、中学の時と変わらねぇな」


「だって、また、高宮コーチとできるとは思ってなかったからさ!」


 慧は凄く嬉しそうだ。


 高宮コーチとバスケをやることが楽しいのかもな。こんなに嬉しそうにしているんだから。


 谷牧というコーチは問題外として、他のコーチと何が違うのだろうか。高宮コーチというのは。


「よし、まずはお手並み拝見。俺と1対1だ。慧から来い」


 高宮コーチはそう言うと、ディフェンスの構えだ。


 さて、高宮コーチとの練習はどんな練習になるのだろう。


 いよいよ、高宮コーチとの練習が始まる。

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