第27話
「第五回 クラス会議を始める。議題は食料問題」
議事堂にクラスメイトが集合している。
遠征に出ている七人と
いつものように委員長が司会進行だ。
「
俺は知らない。
そもそも、彼女はクラスのなかで孤立している。
悩みを打ち明けるほどの友達はいないだろう。
ヒソヒソ話は聞こえるけれど、どれも憶測ばかりだ。
「まいったな。わたしが聞いても理由を教えてくれない……。
「遠征部隊に保存のきく食材でお弁当を作ったから、手持ちの食材が少ないんだ。供給がないと肉料理があと二日くらい。穀物は一週間くらいかな」
「少ないな……、果樹園のフルーツは使えないのか?」
「アクセントとしてお肉といっしょに和えるレシピはあるよ、けどメインの食材としてはむずかしいかな」
「そうか。――
「むりですよ!
「やはりそうか」
「田畑の様子を確認したが食べられそうなものは収穫されていた。未成熟のものはひと月くらい先じゃないと食べられないだろう」
「それって
「認識に
「はあ~っ!?」
「何を今さら驚いている。すでに問題提起していただろう。無報酬ではいづれ問題が発生すると。たとえば病院の
「クラス全員がボランティア精神で行動しなければ、加護の力による余裕ある生活はできない。厳しい言いかたをすれば全員で農作業をすれば問題は解決するんだ。そんな生活は嫌だろ?」
「どうすれば食料を確保できるか、みんな考えてくれ」
俺と
たぶん同じことを考えているのだ。
彼女が魚を捕ってくれれば食料事情はマシになる。
けれど、悪友が彼女の気分を損ねてしまったのだ。
魚の加護があるのなら魚を捕まえて当然だと、仕事を強要するかのような発言。
それが原因だと
この状況で彼女の加護を暴露すれば断りづらくなるだろう。
もしくは、ますます機嫌を悪くして意固地になる。
俺たちのクチからは絶対に言えない。
「とにかく
「委員長、それはダメだ。彼女は犯罪を犯しているわけじゃない。取り調べのような対応は人権を無視している」
「すまない、焦っていたようだ。いまの話は忘れてくれ」
ムードメーカーの
コミュ力おばけの
彼女にだけ辛い思いをさせたまま傍観しているなんて
たまには嫌われ役を演じてみるか!
俺は手をあげた。
「ちょっといいかな。気のせいかもしれないんだけど、前から
「チッ」と誰かが舌打ちした。
女子が俺を睨んだ。その目は『余計なことを喋るな』と訴えている。
想定の
けどな、女子に嫌われるよりも、うまい飯のほうが大事なんだよ。
「俺も感じていたが、女子特有のグループ問題はつねに発生している。悪質な嫌がらせまでは発展していなかったと記憶している」
しかし、俺とは意見が違う。
この世界にきてからも継続してたし、精神的プレッシャーは悪質だ。
女子のソレはとくに陰湿。
「わたしは群れるのが嫌いだから、彼女も同じなんだろうと思っていた。違うのか?」
てっきり嫌われていると思っていた。
女子たちは
後ろめたい気持ちがあるらしい。
しかし、無言のままでは時間の浪費だ。
「委員長、提案がある。女子たちの結束は固く、ここでは話せない理由があると思う。ひとりずつ話を聞いてみたらどうだろうか」
また女子に睨まれた。
「チッ」
舌打ちの犯人がわかった。オマエだ
「そこまでしなくていい。ウチとケンカしたせいだよ」
「
「
「それは恋愛感情という意味で?」
「そ。――前から男子に
「彼女が色目を使っていたとは思えないのだが」
「カレシのいない委員長にはわかんないって。あ~ゆ~女は影でやってんの」
いや、
「にわかには信じがたいな。言い寄られた男子はいるか?」
男子たちは思い当たらないという表情をした。
「
「ウチが間違えてるって言いたいワケ?」
「そもそも、この村では恋愛を禁止していない。怒るのは筋近いだろ」
「はぁっ?!」
「
「
怒りの視線が
「ここにいる男子は覚えがないそうだし……。
それに、言えるわけないだろう。公開告白になるぞ。
恋バナとかしそうにない二人に任せておくと、いつまでたっても話が進まない。
「
「覚えがないよ」
俺の質問に、
「ウソッ?! アイツ薬屋に出入りしてるってウチ聞いたよ」
「農作業で手が荒れるからハンドクリームを作って欲しいと依頼されたけど?」
どうやら噂の出所はアイツらしく、ヤバイって表情で彼女から目をそらした。
「
いやいや、この場にいる全員が理解してるからね。
「そうなのかね?」と困った顔で
「二人ともボクに優しくしてくれるいい子だよ。けれど、告白されたことはないし、どちらとも交際してないよ」
彼は三角関係の当事者とは思えないほど平然としている。
「俺の推理ははずれたようだ」
――黙ってろ
「アイツ、
「ああ、それは本当だよ。彼女はお店を経営してないから家を建ててもらえるのが後回しになっているからね。議事堂でみんなといっしょに寝泊まりするのにストレスを感じているって相談受けたんだ」
「それって告白といっしょじゃん!
「ボクは縛られるのが嫌いなんだ。同棲なんて息苦しいだけだよ。だから丁重にお断りしたんだ」
「そぅ……良かった」
「夜、泊まりにくるだけならオーケーしたよ」
「はあっ?!」
議事堂にいるほとんどの人が驚きの声をあげた。
「それって同棲じゃないの?」
「違うよ。彼女はいつも農場にいるからね。それに食事だっていっしょに食べていない。そんなの同棲って言える?」
「言えない、かも……」
「
辛そうな表情で
「ボクに恋愛感情はないよ。誰にたいしても、ね。人間の本能として欲情はするけれど、愛情は生まれたことないよ」
キレイな言葉でごまかしているけれど、それってセフレしかいらないって意味だろ。
コイツ、優しい顔してあくどいな。
だが、本心を隠さずに言えるのは男としてカッコイイ。
サイテーだが。
「ウチも泊まりにいっていい?」
「もちろん! 歓迎するよ」
もの凄い爽やかな笑顔で彼が答えた。
二股しますって宣言したようなものだ。
「ウチ、嬉しい」
――はぁっ? わけがわからない。なぜ二股男がいいのか。顔か? やっぱり顔なのか?
頭の上をクエスチョンマークが飛んでいるのが見えるようだ。
「俺の推理ははずれていなかったな」
――黙ってろ
「
パニックになりながらも
「話してみるけど農作業してくれるかは責任もてないから」
「それでいい、よろしく頼む。会議は以上だ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます