第14話 海神の僕(ラタペ・ルダ)

リオグルは夜目が効くのか壁に灯る、松明とは違う明かりのみを頼りに地下道を駆ける。


ビアトロは松明越しに闇に紛れ同化しそうなリオグルの背中を、響く足音とともに追いかける。


追跡することしばし、ビアトロの先を駆けるリオグルは灯りが続く曲がり角に入る。


彼もそれを追おうとするが、再び何かを感じ、角を曲がる直前で足を止める。


その一瞬後、何かが曲がり角の向こうから彼の目の前を掠めていくと、通路の反対側で固い何かが壁に当たり、水路に落ちる音が響く。


音からして石ではない。金属製の何か、おそらくさっきと同じ短剣だろう。


そして、角の向こうから舌打ちの音が聞こえ、足音が遠ざかっていく。


ビアトロは角から先を伺い、待ち伏せがないのを確認すると再び追跡を再開する。


先程よりも離れた距離で追跡するビアトロ。


しかしリオグルの姿は完全に闇の中へと消え、地下道の先からは遠ざかる足音だけが聞こえてくる。


追いつくべく足を早めるビアトロ。


だが、しばらくすると前方から突然派手な水音が起こり、足音が途絶える!


見ると壁に灯る明かりに人影ではない何かが照らされている。


それを見たビアトロはとっさに足を止めると、手にした松明を掲げながら近づく。


それは太いもので大人の足の太さほどもある触手。


明かりに照らされ白く照り返しているそれが何本も水路から飛び出し、リオグルの身体に絡み付いていく。


「ラタペ・ルダか」


ビアトロは松明を掲げて照らされた目の前の光景にそう言葉を絞り出す。


ラタペ・ルダはファルテス神の力で産み出されたファルテス・ルダートとは違い、古くから海に生息するラタペイロス神の僕。


その姿は様々で人の何倍もある巨大な海蛇や烏賊、蛸などもいるという。


正直、彼らを敵に回すのはかなりまずい。


彼らを傷つけ、彼らの主である海神ラタペイロスの怒りを買えばただではすまない。


不用意に彼らを刺激して海神の怒りを買い、船が嵐に巻き込まれて沈没した話もあるし、船乗り達の間では船よりも巨大な怪物の話はまことしやかに語られている。

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