第15話 不可解な最期

もし海神の怒りを買えばこの町ごと大波に飲み込まれてしまうかもしれない。


この町にしばらく滞在するのであれば、海神の怒りを買うような真似はするべきではない。


では、目の前のリオグルを助けるべきか、見捨てるべきか。


逡巡するビアトロだが、ふと視線に気付くと締め上げられているリオグルが彼の方を見る。


彼は締め上げられ、不自由ながらもこちらを見ると、触手が絡み付いている手をゆっくりと手を振り上げ、握っていた短剣をビアトロめがけて投げつけてくる!


不意を付かれたわけではないのでビアトロはその場から飛び退き、難なくかわすが、それが触手の主を刺激したのか、更に触手がリオグルの体に巻き付き、そして……


思わず顔をしかめてしまう軋み音が水音に混じって地下道に響き、触手に締め上げられ、もがいていたリオグルの動きが止まると、彼は触手に捕まれたまま水路の中に引きずり込まれていく。


その様をビアトロは唖然と見送っていた。


しかし、やがてビアトロの胸中に疑問が浮かぶ。


なぜ彼は自分を助けるような真似をしたのか。


助からないと悟りながらも最後まで与えられた何かの任務を遂行しようとしたのか。


自分に助けられることをよしとしなかったのか。


それとも……


ふと、通路に響いた水音にビアトロは我に返る。


見るとラタペ・ルダの触手は再び水路から姿を現し、ビアトロとは距離を保ちながらもうねっており、明らかにもう一人の侵入者である彼を警戒している。


当然であろう。ここは彼らの住みかであり、ビアトロ達は騒ぎ立てた側なのだから。


ここは退くのが最善、しかし、そういうわけにもいかない。


どうすれば……


思案するビアトロ、しかし、そこで彼は思い出す。自分には彼らを鎮める方法の心当たりがあることを。


彼は手にした松明の火に息を吹きかけて消すと懐に隠していた竪琴を取り出し、心を落ち着けると弦を爪弾つまびき、音色をかなで始める。

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