第13話 逃亡、追跡
ビアトロは盾を素早くつかんで引き上げ、突き出された短剣を受け止める。盾を通して伝わってくる刺突の衝撃。
それと同時に再び沸き起こった悪寒につき動かされるままビアトロは手にした短剣を振るい、盾の脇から襲いかかった何かをかろうじて受け止める。
刃がぶつかり、擦れ、きしむ音が地下道に再び響く。
突き出されたのは二本目の短剣。
それを認識したビアトロは一刺しをしのげた事を安堵すると共に慄然とする。
暗殺者の短剣ならば、ほぼ間違いなく毒が塗ってあるはず。ならばかすり傷すらも負うわけにはいかない。
ぎりぎりと互いの短剣の刃同士がこすれる音がしばし地下道に響いたが、やがて二人はほぼ同時に飛び退いて間を取り、不毛な膠着から脱する。
一時とはいえ、緊張から脱したビアトロは、安堵しつつも息を荒くしたまま深くため息をつく。
……たかが人探しの仕事でこんな暗闇の中で暗殺者と戦うはめになるなど、
「これは割りに合わないな」
ビアトロは自嘲気味に小さく呟くと盾と短剣で身を守りながら相手の出方を伺う。
と、リオグルの左手が動く。
ビアトロは危険を感じ、とっさに盾で顔を隠す。
盾越しに伝わった衝撃は先程よりは小さく、しかも下からはなにかが落ちたような乾いた音が響く。
違和感を覚えつつも追撃に身構え、短剣を持つ手に力をこめるビアトロ。
だが、追撃はなく、代わりに遠ざかっていく足音が地下道にこだまする。
逃げた、いや、違う。仕掛けたと思わせて引いたのか。
標的は自分ではないのだと直感したビアトロは短剣を収め、明かりがついたままの松明を拾うと、リオグルを追跡する。
壁で輝くほのかな灯りを受けながらの追跡。
遠くに見える相手の背中を追いながらビアトロは考えを巡らせる。
このリオグルと言う男、並の暗殺者ではない。何か目的があって自分と接触したのか。
しかし、この段階で自分を襲う理由に心当たりがない。
だとすると……
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