第12話 闇の中での戦い
「いきなり何を……」
その問いに対し、リオグルは無言のまま突っ込んでくる!
その様にビアトロはなにかを予感すると松明を左手に持ち替え、代わりに腰に帯びていた剣、ではなく短剣の方をとっさに抜き一閃する!
白刃がひらめき、固い金属同士がぶつかり合う音が地下水路に響く!
ビアトロが手にした短剣はリオグルの手が握る刃が黒い短剣を受け止めていた。
そこでビアトロは気づく。
左手に持つ松明の灯りを照り返して輝く彼の短剣に対し、相手の刃は闇と同化したかのように黒いまま。
それを見たビアトロの背筋に冷たいものが走る。
暗闇においてその存在を悟らせない細工をほどこすなど、明らかに闇に生きるものが好む武器、こんなものをただの情報屋が持っているわけがない。
音をたてて水が流れる地下水路の中、刃同士がぶつかり、軋み、弾かれる音が響き渡る事しばし。
幾度目かのつばぜり合いの中、ビアトロは相手を押し返そうと踏み出す!
しかしリオグルもそれに抗い、押し返そうとする。だが、ビアトロはその勢いを生かし、後ろに大きく飛び退く。
間合いをとったビアトロは改めて相対する相手の顔を見る。
先ほどまでのこちらの様子をうかがうような表情などなく、それどころか表情そのものが完全に消えている。
本物か。
ビアトロは苦々しく胸中で呻く。
手練れの暗殺者ともなれば、普段はなに食わぬ顔で標的に近づき、相手が心を許し、油断したところで本性をあらわし仕事をこなすという。
しかし、いったいなぜ?
この町に来てまだ数日、まだ大きないざこざに巻き込まれた覚えがないビアトロには思い当たるふしはない。
だが、実際に彼の前には暗殺者と思われる人物がいる。
「だから兵士に顔を見られたくなかったのか」
もつれる思考の迷路をビアトロは事実を口にすることで強引にねじ伏せると、彼は視線を相手から動かさないまま、左手に持っていた松明を床に放ると、腰に下げていた盾にゆっくりと手を伸ばす。
そこに淀んだ空気をまとい、踏み込んでくるリオグル!
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