第10話 再び北へ

「遅かったな」


「食事をとっていまして」


「そうか。気にするな、こちらも昼を済ませたところだ」


「そうでしたか」


そう手短に会話を打ち切るとビアトロはリオグルを連れて聞き込みを再開する。


行方をたどってあちこち聞き込みを行ったが、リオグルの案内ととりなしもあってか、昼前以上に不慣れな土地にも関わらず順調に進んだ。


これなら、支払う報酬も上乗せしてもいいだろう。


そんなことを思いながらビアトロは聞き込みを続け、やがて裏路地の一角で、


「そいつなら北側の海神ラタペイロスの神殿に向かうと言っていたな」

という情報を得る。


「ありがとう」


ビアトラは謝礼の銀貨を相手に渡すと、北側に戻るべく足早にその場をあとにする。


「南に行ったかと思えば今度は北か。

あんた、行ったり来たりだな」


「全くですね」


裏路地から抜け出し、西から吹く潮風を浴びながら北に向かう二人だが、後ろからついてくるリオグルのその言葉にビアトロは苦笑する。


「ところであんた、神殿の場所知っているのか?」


「ええ、まあ」


ビアトロは記憶をたどり、心当たりがあることに気づくと曖昧な返事を返す。


「そうか、じゃあまた後で会おう」


あわよくば情報料を取るつもりだったか、残念そうにリオグルはそう言うと再びビアトロの前から姿を消す。


ビアトロは再び橋を渡り、渡し船で先回りしていたリオグルと再度合流すると港近くにあるラタペイロス神の神殿にむかう。


「その方でしたら地下神殿に向かいました」


「地下神殿?」


神殿の広間、上半身が人、下半身が魚の海神ラタペイロスを模したとされる像の前にいた神官はそう言った。


「はい、何でも大事な用があるとかで」


「ふむ」


はぐらかすかのような神官の返答にビアトロは釈然としないものを感じはしたものの、問い詰めるようなことはせず二人は神官の案内で神殿内にある地下への入り口に案内される。


そこには厳重に鍵がかけられた鉄の扉が床に埋め込まれていた。

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