第9話 南側の状況
確かに一時、足を止めて橋の上から大海を見渡しても水平線ばかりで果てが見えない。昔の人々はその事に恐れを感じ、そう名付けたとされている。
海から吹き込んで来る風が髪と外套をなびかせ、足元から聞こえる大河、スカータ・オシュの水音と遠くに聞こえる波の音の中、ビアトロは橋を渡り、対岸にたどり着く。
印象は先ほどまでいた北側に比べるといささか寂しく、対して兵士の数も多いようにビアトロには見えた。
天頂に浮かび大地を照らしていた太陽は傾き始めていた。
それを見たビアトロはふと空腹を感じたので、近くの露店で昼食を調達することにした。
小麦を練って発酵させてから焼いた
「この町に来てこちらには初めて来ましたが、大戦の被害が目立ちますね。あまり再建が進んでいないようですが?」
「公は北側の再建を優先するみたいでな」
「なるほど」
ビアトロは商店の主と他愛のない会話をしながら携行食に比べれば幾分は柔らかく焼かれた
すると、ふと近くから何かが聞こえてくる。
「また、『ヴェタ
「海賊って『マディエラ』か?」
「らしいな」
海賊か。
近くで立ち話をしているのはそれぞれ
ビアトロは
今の仕事には関係がないかもしれないが、港町に滞在する以上、海を荒らす海賊の情報は仕入れておくべきだろう。
好奇心と危機意識に突き動かされ、ビアトロは彼らの会話を盗み聞きする。
「奴等は汚い商売をする奴らしか狙わないからな」
「だからマディエラはスリエード商会の船は狙わないのか。あれの船が襲われたって話を聞かないな」
「それもあるが、あそこは領主と強く繋がっているからな。下手に狙えば王国軍を相手にすることになりかねない」
「うまいやり方しやがるな」
彼らはそんな会話を続けながらビアトロのそばから離れていく。
話の先が気にはなるが尋ねる訳にはいかない。
「ではいくか」
ちょうど腹と喉も満足したのでビアトロはリオグルと合流すべく腰をあげる。
待ち合わせ場所にビアトロが到着するとすでにリオグルが待っていた。
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