第7話 取捨選択

「あんた、冒険者だろう?よそ者がこんな裏路地で人探しをするのなら詳しいやつを雇った方がいいとは思わないか?」


態度の風向きが変わった。


ビアトロはそう感じながらも視線をそらさず、素早く考えを巡らせる。


「……確かに。しかしあなたがここに詳しいと言う保証はありますか?」


ビアトロとしてはここが肝心要。


例え、金を払ったとしても得るものもなく、振り回されるのはたまったものではない。


ビアトロの言葉にリオグルはしばし、思案していたが、


「あんた、対岸に行こうとしているんだろう?知ってるか?対岸に渡る橋は日が沈んだら封鎖されるぜ」


その言葉はビアトロの関心を引いた。


「なぜです?」


確かに、ラトに連れられて数日街を回りその話は聞いていた。だが、それ以上の事についてはまだ聞いていない。それについてこの人物はどんな答えを持っているか。


その問いにリオグルは口元に笑みを浮かべると言葉を続ける。


「往来を制限するのは夜間の治安維持のためさ。

……もっとも、抜け道はあるがな」


「抜け道?」


聞き返してきたビアトロに相手はにやりと笑みを浮かべる。


「この町には昔から橋を使わずに川を渡る奴らのために渡し船をやっている連中がいる、そいつらに頼めばなんとかしてくれる」


「なるほど」


「ついでにいうと俺はこいつらに顔が利く。どうだ?俺を雇ってみないか」


相づちを打つビアトロに得意気な笑みを浮かべる男。


なるほど、この町についてそれなりに知っている人物のようだ。


しかし、もし『海鳥レファラ・泊木亭ルブ』に帰れなくなっても、別に宿を取ればいい。一瞬そう考えたビアトロだったが、


「夕方までには帰ってきてね」


と言うラトの言葉を思い出すと思わず苦笑し、腹を決める。


「二割なら出しましょう。ただし、今出せるのは一割、残りは依頼を達成できたらです」

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