拾伍 『黎 霜花』霜花
霜花の父の姉、
「ねーえ、何して遊ぶ?」
庭へと繋がる縁側へ腰掛け、脚をぶらぶらさせながら霰琳と話す。
国の最北端に位置するとは言えども、今は春だ。生温い風が頬を撫で、髪に挿した
「わたくしは何でもいいわ。只、今日の昼食は御父様と共に
何時もの様に話掛けるが、素っ気無い霰琳に霜花は頬をぷくーっと膨らませた。
「うぇえ、つまんなーい。嗚呼、そうだ! ねぇねぇ
「嗚呼もう、我儘を言うのは止めて欲しいわ。先生もきっと御困りになるでしょう」
「いーのいーの。小霰は、お父様とお母様と先生があわあわする顔見たくないの?」
友達は何時も、周りの事と其の評価ばかり気にしている。今も、眉尻を下げて困惑気味に否定を続けていた。
「小霰も見たいよね? じゃあさ、今からお花畑に行こうよ‼」
強引に霰琳の手を引き、二人で庭の南側へ
「小霰、楽しくないの? ほら見て、
春の香りに満ちた花畑にて、霜花は花冠を作り上げた。かなりの傑作に心が躍る。霰琳は喜んでくれるだろうか。否、喜んでくれる筈だ。
「ねえ小霰、嬉し——っ?」
其処で霜花ははたと気付く。
霰琳は、何時もと変わらぬ微笑を湛えて花の中に座っていた。
「……ねぇ、何で小霰は何時も変わらないの?」
常に、微笑みか困惑を浮かべている彼女。其の感情が揺らぐ事は滅多になかった。
「わたしがいっつも何かしてあげるのに、小霰はそんなに喜んでくれない! わたしが報われないじゃんかぁっ。もういいもんっ」
不覚にも涙が零れる。そんな霜花を不安そうに見つめる霰琳の表情は、霜花が我儘を言う度に何度も見た顔だ。踵を返して走り、咲乱れる
——其れから数日後、霜花は玄武の巫に選ばれた。
霜花の為の祝席では、人を寄せ付けずご機嫌斜めな霜花と笑顔で大人に対応する霰琳がいる。
正反対の二人が、共に遊ぶ姿を見られなくなった。
四季は巡り、一年を経た晩秋。
「……? 何故、花冠がこんな処に」
霰琳は、縁側に置かれた
霰琳は、友達が作る花冠がとても美しかった事を思い出した。
枯れて脆くなった茶色の旗弁が、湿った風に煽られ縁側の下に落ちる。
「——そう言えば、今日は霜花の誕生日だわ」
あの子は、自分が生まれた日に死んで逝った。
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