拾弐 『黙殺』北亀
玄武の過去の話を聞いた、翌朝。
(玄武の巫は皆短命だと書物にはあったけれど、
夜な夜な延々と語られた人の子の内容は、とても他人事とは思えないものだ。玄武が名も忘れたと言った
前の、その前の前の前の前の前の前の巫も、己の前の巫から全てを受継いでいるのだ。私物や生活、死に逝く運命さえ。
(わたくしが生きられるかは別として、御母様と御父様は喜んで下さっているのよね。此のままもっと頑張らないと、御母様はわたくしを見て下さらない)
物思いに
「
悲鳴にならない声を喉の奥で押し殺し、角度も秒数も何もかもが完璧な礼をして見せる。
——其の様子を室内の角から眺めていた玄武は、訳の分からぬ感情に
『……面白いなぁ、ほんっとに面白い』
自然と口角が上がる口許に手をやり、ぞくぞくと震える体に腕を回す。
泣いて縋り、巫の任を解いてくれと叫ぶ者は大勢いた。死という言の葉すら知らずに逝く幼児も多かったが、勿論玄武が自ら
大して興味のない物ばかりの世の中で、自らの巫は唯一興味がある物だろう。只、初めは期待していても、どの人の子もやはり同じだと思ってしまうのだ。縋って、泣いて、怒って、癇癪を起して、衰弱して、死ぬ。
『前代未聞だよねぇ、僕を見ないなんて』
哀れで、可哀想な存在。
全ての行動の先には目的があるが、其れを達した処で何にもならないのに努力している。
両親に見
努力して、笑って、喜んで、もっと頑張って、頑張って、心が死ぬ。
其れが霰琳だった。
『憐憫を誘う姿の人の子は腐る程見てきたけど、
非常に興味深い存在。
『——でも、其の関心が全く僕に向いてないのはほんとにむかつく』
こんな感情は初めてだ。如何にかしてあの子の心を此方に向けさせたい。
『一度壊して、僕だけが知ってる君に作り変えておかないと』
——数年後。
霰琳は驚く程簡単に壊れて死んだ。
彼女が幾ら努力を積んでも辛辣な親族達を
『流石に、君の身体が壊れない様にするのは骨が折れたよ。ずぅっと生きてきて、こんなにたくさん実験したのは初めてかなぁ』
霰琳が此の先も生き永らえる為に、玄武は様々な工作を行ってきた。国が黎家に差し出す罪人を使い、神力の影響を全く受けない結界を創り出す。
腐敗しきった霰琳の親族達とは他に、彼女に関わる者が居た。優しい言の葉を掛けて霰琳の心を救わんとする奴は徹底的に排除をする。
——すっかり死んだ少女の心に、そっと語り掛けた。
『初めまして、僕の
一度死んで、生まれ変わった祝福の挨拶を。
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