玖 『黎一族』
あれから約
「御母様と御父様も、一緒に皇都
「
乳母が頷くと同時に両親が顔を見せる。
立てた膝の上で頬杖を突いて、北亀が馬車の上から此方を見下ろしていた。
御者が手を
父と母は共に馬車へ
「御母様と御父様は皇都
弐の意味が察せられる
「そうね。私の子が
母は、前者の意味には気付かずのうのうと息をした。
「いいか、霰琳。皇帝に
(……嗚呼、如何して大人とは皆こうも面倒臭い者なのかしら。そんな大人になるのならば死んだ方が良いですわ)
「はい」と微笑みを浮かべる裏で、霰琳は
霰琳が開け放った窓からするりと北亀が入り、そうこうする内に馬車は出発する。
~~~
誰一人口を開かない静かな馬車内で、霰琳は父に話し掛けた。
「御父様は、とても優れた武道家だと乳母に聞きましたわ。黎族に生まれた男児として、
腐った大人は、称賛の言の葉を浴びせれば安易に調子付く。
「黎家の風格を保つ為にも、当然の事だ」
眼に見えて増長した父に、
「——では、御父様は
「霰——」
霰琳は父が咄嗟に
「残念
『ね~ぇ、俺の小霰に何しようとしたの? 長年苦しめておいて、
北亀はそう
『……あーぁ、
「ふふ、別にいいでしょう?」
「御母様、と御父様、
瞬間、母は恐怖の余り
『あれぇ、
「……わたくし、ああは言いましたけれど御母様を殺そうなんて思って居なかったのですよ。其れ程酷い事はされておりませんし……。ですがまあ、過ぎた悪戯だと思えば中々に娯しかったわ』
『元父親の方はど
『嗚呼、そうだわ。北亀、皇都に付いた頃にはきっと御者が惨事に気付くでしょうから、
喜色満面でそう発案した霰琳に、北亀は嬉しそうな顔で頷いた。
元は純黒の座席に黒味掛かった赤がゆっくり
そして霰琳は、今日も今日とて破顔一笑して北亀に伝える。
——「
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