捌 『執着』

 霰琳は北亀との関係を上手く築いていた。名を呼べば応え、命ずれば応える。神と巫との関係性を超え、素直に親しい間柄の存在。

「北亀」

『なぁに?』

「わたくしは良い子?」

『——うん、すっごく良い子』

 北亀は少々考えた後、にっと口角を上げて答える。の瞳には闇が見えた。

「‼………でも、本当かしら。御母様がわたくしを悪い子だと言っていたわ。貴方も聞いて居たでしょう?」

『でも、良い子。ちゃぁんと勉強して、偉い子、凄い子』

 ——貴方だけが、わたくしを理解してくれる存在。

 ——貴方だけが、わたくしを愛してくれる存在。

「……有難ありがとう、北亀」

 生きる意味も全て北亀に、学ぶ意味も、努力する意味も全て、北亀、北亀。

 


『小霰、もっと僕を頼って……』

「わたくしの傍から離れないで、北亀」

『僕に縋って、僕無しじゃ居られない存在……嗚呼、可愛いなぁ』

「北亀が居ないと生きていけない」

『——君が嫌いな奴は皆、僕が殺してきてあげる』

「——大好きよ。ずっと一緒に居て、わたくしの身が亡ぶまで」



『例え、何を犠牲にしてでも小霰の傍に』。

『■■き』。『■霰■君■■』。

『例え、何を犠牲にしてでも北亀の傍に』。

『愛■■■』。『■■永■て』。



(——ねぇ、北亀。そうでしょう?)

 例え、わたくしと貴方が〝人殺し〟であっても、ずっと一緒にいるのよね。

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