第2話
冬風の名前はここ最近有名になってきていた
霊力・魔力を世界に浸透させ、隠れて暮らしていた魔族たちと人間を取り繋いだ立役者
永劫の時を生きる死神として気楽に生きようとする、平成生まれのトラブルメーカーでもある
(令和150年のこんな日に、冬風と会うなんて…)
「さて、僕の自己紹介をしたんだ。君は?」
「…あ、
「…ああ、緋月一族の…」
緋月一族も冬風と同じく名を馳せている
というのも、魔族の大半を取りまとめているのは緋月一族の現当主である
それ故に交渉がうまく運んだのは言うまでもない
「父が世話になっているね」
「こちらこそ…」
「ところで君は、綺麗な魔力を持っているね。神力にも似たなにかだ」
「あ、お母さんが神族だから…かな?」
「そうなんだね。案外僕は、父親の親友家族を知らないから困るな」
そういいながら笑い、零奈に手を差し出す彩斗
重なった手を強く引き、零奈を立たせた
「こんなところ来るものではないよ。ひとまず家まで送ろうか」
「いやその…道に、迷って…ね?」
「…え?」
「私の家って東部にあるんだけど、ここっていわゆる中部…だよね?」
「そうだね…静岡県静岡市に該当するかな。東部というと…?」
「駿東郡長泉町なんだけど…」
「むしろどうやってきた!?」
直線距離ですら50キロ以上離れているというのに、高校生が何故どうして…と考えていると、答えは本人からもたらされた
「家の方角こっちかーって歩いてたらここに…。途中魔術使って時間短縮しようとしたからかな」
「それだね、明確にそれのせいだ。確か緋月霊斗さんの得意魔術は空間制御だった気がするし」
「あ、そうそれ!瞬間移動に使えるから便利なんだよね」
「よくもまぁその歳でここまで転移したものだね!?」
空間制御といえば高難易度魔術として有名であり、使用できるものはかなり稀だ
瞬間移動を始めとする空間そのものを制御できるもので、応用すればありとあらゆるものを切り裂く刀のように機能する
ソレだけ練度が必要であり、最初の使用者とされる霊斗でも50キロの転移はかなり難しいという
「よくわかんないけど、どうやって帰ればいいの?」
「知らないよ僕に聞かれても!?それこそ緋月霊斗さん呼んだらどうかな」
「お父さんとお母さんは今ごろ私の兄弟作ろうとしてるから無理かな」
「子供を放置してそんなことを!?」
「いやー、そもそも私一人暮らしだもん。家にいるかどうかなんて気にしてないと思う」
「すごいご家庭だね!」
疲れ切ったかのように荒い息をする彩斗
それを見て不思議そうに顔を覗き込む零奈
「大丈夫?」
「誰のせいだと思ってんのかなぁ!?ガフッ!」
いきなり叫び声を上げたせいでむせてしまい、その場に撃沈する彩斗であった…
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