第5話 桜

(いてて、 ここは何処?皆も居ないし。)

「大人しく引き返せ。その年で死にたくはなかろう」

「私の名前は桜、貴方の名前は?」

「私に名など無い」

「ゴールの場所を教えて」

「ゴールは俺の後ろにある扉の向こう。だが、通すわけにはいかない。引き返せ」

「、、 引き返したところで私はどこに行けばいい」

「知らん。 適当にこの世界で生きとけ」

「生きるって何だと思う?」

「知らん。興味ない」

「私は前に進むことだと思う」

「餓鬼が黙れ。最後の忠告だ、生きるか 引き返すか、どちらが良い」

「私は生きて扉の先へ行く」

「私は君の能力を知っている。確か回復させるだったか。 それじゃ殺せない」

「確かにそうよ。けど私にはこのナイフがあるの」

「慢心は神をも殺す」

「あら、私は慢心したつもりはない。 なぜなら私は負けないから」

「ナイフがあるから勝てる、か」

シュン

(しっぽが伸びた!)

パキン

「え?」

「これでナイフは使い物にならなくなった。柄だけでは どうしようもない」

トコトコ

「確かに私は心の奥底で慢心をしていた。 教えてくれてありがとう。だけど私は戻らなきゃいけないの。 あなたは良い人よ、だから道を開けて。あなたが死なない為にも」

トコトコ

「なぜ動き回っている? ギリギリまで近づいてすぐにドアを開けるつもりか?無駄だ、諦めろ。私は君たちが持っている能力を持っている」

「君の友達の一人に速度を変える能力を持った奴がいるだろ」

ピタッ

「 ようやく止まったか。そのまま戻ってくれるとありがたいんだが」

「ってことは葵の能力、いや、調査をする能力も持っているの?」

「あぁ」

「そう、君は私の能力についてどの程度知っているの」

「回復それだけだ。その状況でどうするつもりだ?」

スッ

「さっきのナイフか?それがどうした。そんな柄だけで何が出来る」

「さっきの『慢心は神をも殺す』って言葉 そっくりそのまま返してあげる」

グサ

(えっ、体に穴が。何故一体何をした)

「私の友達に2人のバカがいる」


───数日前───

「いててまた怪我しちまった。桜、治してくれ」

「はぁ、いくら簡単に治せるとは言っても、無理はしないで。 危ないと思ったら戦う前に逃げる?わかった?」

「すみません」

「また健斗怒られてやんの」

「遥斗も」

「すみません」

(服をこんなにボロボロにして、どうするのよ)

(まぁ考えても仕方がない)

「ヒール」

(え?服が戻っている。いや、回復している。そっか!皮膚の回復が出来るのだから服も直せるか)

「ここら辺に鬼はいません。 単独行動は認めますが、あまり離れないでください」

「わかった」

(木の枝か、、、)

ポキッ

ポイッ

(、、、ヒール)

ギュンッ

(うっ、凄い早い。)

「グォォォ」

(え、何故、 目の前に急に)

ブゥン

バキバキ

(一振で木を真っ二つに。当たったら死、)

(どうする、どうする。逃げる、死ぬ)

ブゥン

ブゥン

「痛ッ」

(ヒール)

「はぁはぁ」

(これはさっきの木、私もこうなるのかしら?もっと生きたかったな。木の枝、直す、早い、、、)

!!

「はぁはぁ」

「グォォォ」

(まだ、まだ、もっと奴を近づけて、いま。死ね、この糞野郎がぁ、ヒール)

グサ、グサ、グサ

「グォォォ」

「はぁはぁ、やった、やってやったぞ」

「大丈夫かぁ!」

(来るのが遅いのよバカ、、、)

─────────


(あの後、私は目を覚ました。 人が一番強くなるのは恐怖に立ち向かう時。私はあの恐怖を克服した)

「す、凄い、な。きみ、は強い」

「そう、当然のことよ」

ポン

(消えた?いや、もう良い。前へ進もう、この扉の先か)

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