第9話 戦いの備え

用意を整えた二人は言われたとおり、詰め所に向かう。


「全員揃ったな」


詰め所の隣りにある、普段は練兵場となっている広場。そこで兵士長が集まったアクレイとルアンナを含めた一同を見渡す。


数はけして多くはないが、これでほぼ全員である。


皆が同じような格好の中、やや小柄な体型でやや大きめの鎧兜で身を包んだルアンナとアクレイの姿が目につく。


二人は長老が所蔵していた古い鎧兜一式で身を包み、ルアンナは槍、アクレイは剣と盾、二人揃って腰に石弓と矢筒を携えた姿で兵士たちと共に整列していた。


そのさまを横目で見る兵士達の何人かからはその初々しい様にかつての自分たちを思い起こしたか、時折笑みが溢れる。


そんな中、兵士長が一同に向かって告げる。


「静まれ。

これより我々は村のそばに現れたケルツを討伐する。事前の偵察で群れはいくつかの集団に分かれていて、規模もまちまちだ」


兵士長の言葉に兵士たちの表情が引き締まる。


「よって隊をいくつかに分ける。本隊はまとまって行動して一つ一つケルツを掃討していき、それと同時に神官殿による浄化を行う」


兵士長の言葉に傍らに控えていた革鎧を着込んだ人物が頭を下げる。


彼はこの村の教会に務める神官の一人であり、長らく唯一神とされていたオーモスの力を借りた奇跡と鉄の槌を振るって自ら戦うことができる神官戦士でもある。


現在、魔物ファルダーの発生源である歪みを消し去る、『浄化』ができるのはオーモスの力を借りた奇跡を起こせる彼らだけなのである。


「残りはケルツが逃亡しないよう、群れの監視。それと…」


そこで兵士長は隊列の外れにいるアクレイたちに目を向ける。


「今回冒険者見習いとしてアクレイとルアンナも同行する。彼らには最も規模の小さな群れの相手をしてもらう」


その言葉に兵士たちはざわつきだす。

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