転職で入社した女性は、何か秘密を抱えていた

春風秋雄

気になる女性

北原一華(いちか)。それが、今俺が気になっている女性の名前だ。今年の6月に中途入社でこの会社に入ってきて、2週間の研修を終え、先月から経営企画室に配属され、俺の直属の部下となった。入社してまだ2か月くらいしか経っていないが、既存の社員より仕事は出来る。前職はまったく畑違いの業種だったようだが、パソコンのスキルは高く、俺が頼んだ資料は、普通の人なら半日かけてやる仕事を、ものの2時間で仕上げてくる。前職でも経営企画の部署で働いていたということだけあって、マーケティングの能力も高い。外見は地味で、髪の毛も無造作に後ろで縛っているだけだ。赤い縁のセルロイドの眼鏡も地味な印象に拍車をかけている。服装も地味な格好をしているので、見た目は40代ではないかと思われているようだが、人事担当者からもらった資料では32歳となっている。そんな女性のことを俺が気になっている理由は、時々見せる彼女の笑顔だ。めったに笑わず、必要以上のことは話さないのだが、同僚のギャグに思わず笑う顔や、俺が仕事を褒めた時に応える笑みが妙に美しい。この女性は、ちゃんと外見を飾れば綺麗な女性になるのではないかと思うのだが、今の時代それを本人に言えばセクハラと言われる可能性があるので、俺は何も言えないでいた。


俺の名前は折原基義(おりはらもとよし)。36歳の独身だ。大学時代の友人、重野徹に誘われて、一緒にスマホアプリの制作会社を立ち上げた。出資は100%重野だったので、重野が社長で、俺は専務という肩書でスタートした会社だったが、重野が開発するアプリは続々とヒットを重ね、会社はどんどん大きくなった。設立から11年経つ今では、社員80名ほどの会社になり、重野は開発に専念し、俺は経理財務、総務などの経営全般をみるようになった。社員数が増え、売り上げが上がってくると、必然的に事務的な仕事も増える。そこで、即戦力で働ける人材を募集したところ、北原一華さんが採用されたというわけだ。


その日は、北原さんの歓迎会を兼ねた部署内での懇親会を開いた。若い社員ばかりなので、参加しないという人も出るのではないかと思ったが、ほとんどの社員が参加した。時間が経つにつれ、皆席を移動して、様々な人と会話をしている。しかし、北原さんだけは最初の席から移動せず、じっとその場で食事を続けていた。最初のうちは皆気を使って新人の北原さんに話しかけていたが、そのうち誰も話しかける人はいなくなり、北原さんはポツリと一人でいた。俺は北原さんの席の隣に移動して、北原さんに話しかけた。

「会社には慣れましたか?」

「あ、専務。はい。ありがとうございます。少し慣れてきました」

北原さんのグラスを見ると、ウーロン茶を飲んでいた。

「北原さんは、お酒は飲まないのですか?」

「お酒は嫌いじゃないんですけど、どうも酔っぱらうと酒癖が悪いようなので、最近は人前では飲まないようにしているんです」

「酒癖が悪いのですか?人にからんだりするのですか?」

「からむのもあるんですが、最後は泣き上戸で、大変みたいです」

「大変みたいですということは、自分では記憶がないということですか?」

「全然覚えていないのです。どのへんからスイッチが入るのかもわからないので、これくらい飲んでやめておこうということも出来なくて、だから、ひと前では最初の1杯だけ飲んで、あとは飲まないようにしているんです」

「そうですか。どうなるのか、見てみたい気もしますが、大勢の前ではやめておきましょう。今度私と二人で食事をする機会があれば、遠慮せずに飲んでください。私は酒癖の悪い人には慣れていますので、北原さんがどうなっても対応できますから」

「酒癖の悪い人に慣れているのですか?」

「社長の重野なんか、ひどいものです。あの人は絡み酒ですので、大切な取引先との会食には必ず私も同行して、社長には飲ませないようにしています。開発部門の懇親会のときは、開発部長に、絶対飲ませるなと言っています。昔は懇親会をするたびに社長に絡まれた社員が何人か辞めていました」

「そんなにひどいのですか?」

「想像以上ですよ」

俺が笑いながら言うと、北原さんも笑った。その笑顔が本当に綺麗だった。


北原さんと二人きりで食事をする機会は、思いのほか早くやってきた。明日銀行に持って行く経営計画書の作成を北原さんに手伝ってもらっていたのだが、それが思ったより時間がかかった。大きな融資を受けるための資料なので、細部にわたって非の打ちどころがない計画書にしなければならず、何回も作り直したためだった。やっと出来上がったときは、9時を過ぎていて、社員は俺と北原さん以外は皆帰って、他に誰もいなかった。

「遅くまで悪かったね。お腹すいたでしょ?何か食べに行こうか」

「ありがとうございます。じゃあ、遠慮なくご一緒させてもらいます」

何を食べに行こうかと迷ったが、時間が遅いので、夜中までやっている焼き肉屋に行った。

「今日は飲んでもいいよ」

俺がそう言うと、北原さんは笑いながら

「やめておきます。専務に嫌われたくないので」

と言った。

「私はプライベートで嫌っても、仕事で差別することはないよ。仕事はあくまでも能力で判断するから」

「専務には、プライベートでも嫌われたくないです」

聞き方によっては意味ありげな言い回しだなと俺は思った。

しばらくは、肉をもくもくと食べてから、少しの酔いも手伝って俺は聞いた。

「北原さんは、コンタクトにはしないの?」

北原さんは意表を突かれたような顔をして俺を見た。少し言い淀んだ後、やっと答えた。

「眼鏡で支障がないので」

想像していなかった微妙な回答が返ってきたので、俺はそれ以上何も言わなかった。

その後は、他愛のない会話を楽しんだ。こうやって話すと、北原さんは、意外に明るい性格のようだ。外見もさることながら、仕事中の北原さんは大人しく、どちらかと言えば暗い印象があるだけに、他の社員、誰もが知らない、俺だけが知る秘密を見つけたような気がした。


あの残業の日から、北原さんと二人きりで食事をする機会が度々訪れた。半年も経つと、部署内で北原さんは一番の戦力になっていた。必然的に難易度の高い仕事は北原さんに振るようになってくる。この会社の経営企画の仕事は締め切りのある仕事が多い。すると、締め切り間際になると、俺と北原さんだけ残業するということが増えてきた。俺は、その都度北原さんを食事に誘った。

「いつもいつも遅くまで、申し訳ないね」

「でも、そのおかげで、専務に美味しいものを食べさせてもらえるので、得した気分です。ふぐ料理なんか、普段食べられないですもの」

今日は会社の近くにある、ふぐ料理の店に来て、会席料理を食べていた。

「そう言ってもらえると助かるよ」

「専務は独身だと聞きましたけど、こんなに度々私と二人きりで食事をして、彼女さんに怒られないですか?」

「残念ながら、彼女さんはいないよ。だから、そんなことは気にしなくていいよ」

「付き合っている方、いないのですか?作らないのですか?」

「作らないと言うか、作る暇がないと言ったところかな。会社を立ち上げてからは、重野社長と本当に昼も夜も、がむしゃらに働いたし、会社が軌道に乗ってからは、色んな仕事が増えて、一人で残業残業の日々だったからね。北原さんをはじめ、やっと戦力になる人が増えて、今は少し落ち着いたけどね」

「じゃあ、これから彼女を作らなければ」

「そうだね。こんな私でもいいと言ってくれる人がいれば良いのだけどね。北原さんこそ、毎日のように残業で、彼氏に怒られないのかい?」

「私、彼氏いません。もうそういうのはいいなって思っています」

「結婚とか考えないの?」

「以前色々あったので、もうそういうのは考えないようにしています」

何があったのかは聞けないが、北原さんが外見を気にしないのは、そういうことが理由なのかもしれない。それよりも、結婚は考えないと言った北原さんの言葉に、俺は少なからずショックを受けていた。いつの間にか俺は、北原さんを異性として意識していたようだ。


店を出て、北原さんのためにタクシーを止めようと思っていたら、急に雨が降り出した。ゲリラ豪雨のような雨で、一瞬で二人はびしょ濡れになった。慌ててビルの軒下にもぐりこみ、とりあえず雨から逃れたが、コンビニで傘を買おうにも、少し離れたところにしかない。こんな日に限ってタクシーはまったく来なかった。俺は走って帰れば、マンションはすぐそこなので大丈夫だが、このままでは北原さんが風邪をひいてしまう。今北原さんに会社を休まれては大変だ。

「北原さん、私のマンションはすぐそこなので、走って私のマンションに行きませんか?服を乾かしたら、私の車で北原さんのマンションまで送りますから」

北原さんは、迷っているようだった。

「このままだと、風邪をひいてしまいます。行きましょう」

俺はそう言って北原さんの腕を掴んで、雨の中に飛び出した。


北原さんに着替用として俺のスウェットを貸し、シャワーを浴びてもらった。濡れた物は乾燥機にかけて乾かす。さすがに上着とズボンは乾燥機にかけられないので、バスタオルで水気をとり、ハンガーに吊るした。

俺も着替えて、髪の毛だけドライヤーで乾かす。エアコンで部屋が温まって来た頃に、北原さんが風呂場から出てきた。

「こんな格好を専務に見られるなんて、恥ずかしいですね」

そう言いながらリビングに入って来た北原さんを見て、俺はドキッとした。確かにサイズの合わないスウェット姿は可哀そうだったが、いつもは無造作に後ろで縛っていた髪は解放され、サラッとしたストレートロング。そして、いつもかけている赤い縁の眼鏡がない。その素顔は、とても綺麗だった。

「北原さん、メガネは?」

「ああ、いつも家に帰ってからはかけないので、かけるのを忘れていました。あれは伊達メガネなんです」

「伊達メガネだったんですか。どうしてわざわざ?」

「自分の素顔を見られたくなかったんです」

これだけの美人なのに、素顔を出さないなんてもったいない。何か理由があるのだろうか。

「それより、どうしましょう?上着とズボンは乾くのに時間がかかりそうです。乾燥機に入れた物が乾いたら、そのスウェットのまま帰りますか?車だから、そんな恰好でも大丈夫だと思いますが」

「そうですね。このスウェットも洗って返さなければいけないし」

「そんなのいいですよ。私が洗いますから」

「嫌ですよ。今下着も履かずに、直に着ているんですから。そんなの専務に渡せないですよ」

そう言われて気づいた。今北原さんは下着を着ていないのか。

「それより専務もシャワーを浴びて温まらないと、風邪をひきますよ」

乾燥機が終わるまでまだ時間がかかりそうだったので、俺はシャワーを浴びることにした。


風呂からあがると、北原さんがコーヒーを淹れてくれていた。

「勝手に台所を漁ってしまいました」

「ありがとう。乾燥機もう少しで終わりそうだよ」

コーヒーカップに口をつけたところで、乾燥機が止まった。コーヒーを飲み終わると、北原さんは立ち上がり、乾燥機に衣類を取りに行こうとした。俺は思わず立ち上がり、北原さんを背後から抱きしめた。

「今日は泊まっていかないか?」

ジッと固まっていた北原さんが口を開いた。

「私、専務が思っているような女じゃないですよ」

「北原さんの過去に、何かあったんだろうなとは想像しているけど、私には関係ない。今の北原さんが好きなんだ」

「こんな私と関係をもったら、後悔しますよ」

「北原さん相手なら、何があっても後悔しない」

俺がそう言ったところで、やっと北原さんは振り向いた。俺は優しく口づけた。


朝早く、俺は一華さんをマンションまで送っていった。一緒に出勤しようかと言ったが、当分は社内の人には内緒にしてくださいと言われた。

一華さんは、会社では変わらず地味な格好を通した。でも、俺の部屋に来た時は、髪をほどき、メガネも外して素顔を見せてくれた。その美しい顔は、俺だけのものだと言う気がして、外に出るときの恰好に関しては、俺は何も言わなかった。

会社では内緒にしていたはずなのに、残業で二人だけで会社に残る頻度が高くなると、二人は怪しいと噂されるようになった。俺としては、いつかは公にしようと思っていたので、噂になるのは一向にかまわなかったが、一華さんは何とか噂を打ち消そうとしていた。


経営計画に必要な売上計画表の作成を営業部に頼んでいたところ、その資料を持って、一人の女性が経営計画の部屋に入って来た。北原さんがその資料を受け取ろうとしたところ、その女性は北原さんの顔を覗き込むようにして言った。

「あれ?北原さんじゃないですか?」

北原さんは驚いたような顔をしてその女性を見た。

「やっぱりそうだ。北原一華さんですよね。へえ、この会社で働いていたんだ」

北原さんは黙っている。

北原さんの隣に座っていた同僚の女性社員が、その女性に尋ねた。

「あなたは北原さんと知り合い?」

「北原さんが前働いていた会社にしばらく派遣でいたんです。その時は、大変だったんですよ。ねえ、北原さん」

その女性は意味ありげに北原さんを見た。そして北原さんの隣に座っている女性社員に事情を話しだした。

「北原さんは、上司の部長さんと不倫をしていて、それが部長の奥さんにバレて、最後は奥さんが会社まで乗り込んできて大騒ぎ。もうちょっとで警察沙汰になるところでしたものね。北原さん、ここでは不倫してないでしょうね?」

そこまで聞いて、俺は黙っておれなくなった。

「ちょっと君。君はうちの社員ではないようだが、誰なんだ?」

俺に話しかけられて、その女性は一瞬驚いたようだったが、堂々と名乗った。

「私は2週間前からこちらの会社に派遣された水野といいます」

「派遣社員さんですか。どちらの派遣会社ですか?」

水野さんは派遣会社の名前を言った。

「そうですか、わかりました。水野さんは、明日から来なくていい。派遣会社には私から言っておくから」

「え、どうしてですか?」

「派遣先で知りえたことを、次の派遣先でべらべらしゃべるような人を、うちの会社では怖くて働かせられない。だから、もう来なくていい。派遣会社には専務の折原からそう言われたと言っておきなさい。私の方からも派遣会社にはそのように説明しておく」

水野さんは青ざめた顔で俺を見ていたが、資料だけ置いて部屋を出て行った。

俺が人事担当者に内線で事情を説明し終えると、北原さんが俺の席に来た。

「専務、今日は早退させてください」

北原さんはそう言って身支度をして出て行った。


その夜、俺は北原さんのマンションへ行った。部屋にあげてもらえないかもしれないと思ったが、エントランスでインターフォンを鳴らすとドアを開けてくれた。

部屋の中に入ると、テーブルにはビールの空き缶が並んでいた。めずらしく飲んでいるようだ。

「私ももらっていいかな?」

俺がそう言うと、一華さんは冷蔵庫から缶ビールを取り出し、コップを用意してくれた。俺が一口飲んだところで一華さんは言った。

「今日、あの子が言っていたことは、すべて本当のこと」

「そうなんだ」

「だから言ったでしょ。私と関係を持つと後悔するって」

「別に後悔はしてないよ」

一華さんがチラッと俺を見た。

「私、こう見えても前の会社ではモテてたの」

「私が見てもモテるだろうなと思うよ」

「でも、私は誰も相手にしなかったの。ピンとくる人いなかったから。そしたら、一人だけ変な人がいて、ストーカーまがいのことをしてくるようになった。その時に、上司だった部長に相談したの。部長は本人と話して、このままだと会社として対応しなければならなくなるからと言って、ストーカー行為をやめさせてくれた。それから何かあると部長に相談するようになって、いつの間にか男女の関係になってしまったの。私、小さい頃にお父さんを亡くしているから、部長に父親みたいな安心感を求めていたのかもしれない」

聞いていて、俺は胸が苦しくなってきた。しかし、ここはちゃんと聞かなければならないと思った。

「私は部長との結婚なんて望んでいなかった。奥さんもお子さんもいる人だったから、そんな家族を不幸にするようなことはしたくなかった。それなのに、部長の方から奥さんとは離婚するから結婚しようと言ってきたの」

一華さんの魅力を知っている俺だから、その部長さんの気持ちもわからないではない。

「最初はそんな気持ちはなかったのに、そんなことを言われると期待してしまうじゃない。私から急かすつもりはなかったけど、ついつい、本当に離婚するのって、何回か聞いてしまった」

そりゃあ、そうなるだろうな。

「部長は、奥さんがなかなか離婚に応じてくれないと言っていた。奥さんが納得するように色々条件を出しているから、もう少し待ってくれと、その都度言ってくれた。でも、それは嘘だった。ある日、いきなり奥さんが会社に乗り込んできたの。私たちの部署の部屋に入って来て、私に掴みかかってきた。何発か叩かれたわ。でも部長は何も言わないの。そのうち奥さんは部長のところへ行って罵り始めた。部長はオロオロしながら、やっと口にした言葉が、“どうして知っているんだ?”だった」

え?どういうことだ?

「部長は奥さんに離婚の話なんか、全くしてなかったの。後から分かったことだけど、奥さんに私と不倫していると教えたのは、例のストーカー男だった」

俺は何と言っていいのかわからなかった。

「もうすべてが嫌になって、会社を辞めた。もう男なんかこりごり。もう誰も私に近づいてこないでと思って、出来るだけ目立たないようにしようと決めたの」

そういうことだったのか。地味な服装をしていたのも、髪を無造作に縛っていたのも、伊達メガネも、すべてそれが理由だったのだ。

「じゃあ、私が近づいてきたときは、迷惑だった?」

「仕事のこともあったし、別に迷惑とは思わなかったけど、嫌な予感がした」

「嫌な予感?」

「私が専務を好きになってしまうのではないかという予感」

「それが嫌な予感?」

「だって、あんな修羅場を経験した女だと知ったら、皆引くでしょ?ましてや、専務という立場の人だから、周りの目を気にするでしょうし。だから、望みのない人を好きになったらだめだと思っていたの」

「でも好きになってくれたんだ?」

一華さんは、ビールをグビッと飲んで言った。

「私、会社辞めます」

一華さんは真剣な目で俺を見た。

「ちょうど後輩も育ってきたことだし、私がいなくても専務は困らないでしょ?」

「そうか、そうだな。わかった。一華さんは会社を辞めて、私と結婚しよう」

「ええ?どうしてそうなるの?」

「私と結婚するのは嫌かい?」

「そうじゃなくて、さっきの話聞いてたでしょ?そんな女と結婚できるの?今日のことで、会社の皆も知ってしまったんだよ。専務はあんな女と結婚するんですかって、会社中の人から言われるじゃない」

「言いたい奴には言わせておけばいいさ。それで仕事に支障をきたすわけではないし。私は最初に言ったよね。過去に何があったかなんて関係ない、今の一華さんが好きだって。だから結婚しよう」

一華さんは、ジッと俺を見つめていたが、俺のところまで来て、抱きついてきた。そして、子供のように泣き出した。

「一華さんが酔うと泣き上戸になると言ってたのは、こういうこと?豪快な泣き上戸だね」

「これは嬉しくて泣いているの!」

一華さんはそう言って、俺の顔じゅうにキスしてきた。

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