バイアスとの折衷案
釣ール
現実に意味なんてない
ポリコレなんて嘘だ。
否定はしないし肯定もしないけれど傾向としては悪くはない。
ただ綺麗事なんだよ。
それならいじめもブラック企業なんてとっくになくなってる。
変な陰謀論者も限界集落の長として静かにやってるかもしれないぐらいが現実的。
これでも
ろくな時代がなかったと年上達は言うけれどまあ分からんでもない。
学校教育を日常として送っていると色々ツッコミどころもある。
それでもテストは受けるし異性が好きな者として世のコンテンツを楽しんでいる。
キャラの濃い友人達に恵まれたのと今より小さい頃にいじめられた過去が今を助けているのかもしれない。
顔も良くないし背と横幅だけデカくて都会ではない世界で生かされてるけれど幸せがどうとかそういう感じではないな。
昔なら有名人やアイドルが同世代にいるのなら、自分達の場合は炎上系インフルエンサーや起業家であふれている。
家庭的にも特に毒親とか
生きているだけで後ろ指さされることだけは避けられない世界なのはもう痛感してるから。
連れとLINEでのレスバトルに笑いながら今日もどの店がいちばん美味いか考えながらゲームをする。
そういえばちまちま付けてる簡易ブログにファンがついたのか監視されてるのかダッシュボードの数字が伸びていた。
陰キャラなのでなんでこんなブログが伸びるのか小学生の頃は分からなかったがインターネットだからこそ誰が見てるか分からないと知って敵意を持つようになった。
YouTuberなんて陽キャのすることで自分とは無縁。
もうすぐ受験も始まるからなんか面白そうなことをアウトプット出来ないか考えるための場所だったのに誰が見ているのやら。
ダイレクトメール的な機能をしぶしぶ付けたが定期的に送られてくるサイトの広告と共に同じ中学生らしき男子から情報をもらっていた。
「筋トレのやり方?
こんな親切に教わってもデブ体型の俺にはあまり親切には思えないのに。」
だが未確定筋肉君は思いのほか優しくて、やり取りをしているとどうやらインターネットで同世代がゲームの記事や日常をつづっている姿に動画配信活動を行っている彼は際牛と仲良くなりたかったそうだ。
姉が昔インターネットをやっていたころはこんな自然なやり取りも多かったらしいが昨今でこんな純粋で頭の良さそうな子となら友達になってみたい。
それとこんな際牛に頼み事もあるらしく、高くついたらやだなあと複雑な気持ちでやり取りを続けていくのだった。
***
せっかく稼げるのだからしっかりと便利な物を使ってしこたま稼いだるわい!
これって関西弁ではないのか。
関西在住だが方言にも格差ってあるしこれもガチャか。
しかし今も昔もこれからも生きづらい世界だ。
少し学校やら何かに行かなかっただけで不適合だのみなちょろい。
「こいつら普段絶対ちゃんとしてないやろ!」
とアンチコメントが来る度に笑う生活は年相応なのだろうか?と結構悩んでいる。
炎上系配信者と言われてしまっているが別に感じたことを発信しただけだ。
あまりにも学校や中学生活がダルすぎる。
まあ言葉は荒くなってしまったが単純に生活力がまだ少ない男子中学生の主張は拡大解釈されやすいのだろう。
「俺やてなあ。
もっと中学生らしい発信してみたいって思うこともあるんや。
けれど負けへんで他の奴らと!」
そんな時にエゴサと同時に同世代がやっているSNSやブログなどを見かける。
正直金を稼いでるはずなのにあいつらが羨ましいこともある。
だが腕力も拡散力も俺が上や!
秋空は虚勢なのか根拠のある自身なのかもはや分からない戦いを一人で行う。
次はある田舎へ向かう。
取材みたいなものだ。
配信もひとつのマスメディア。
ひ弱アピールもうんざりなのでここである生物が日本に現れたらしいので戦おうと思ったのだった。
「俺ならできる俺ならできる俺なら勝てる!」
だいぶ身体を格闘家とのコラボで鍛えたのだ。
いけるはずだ!
中学三年生らしい謎の全能感で生物へと戦いに向かう。
一方でまたひとつ物語が動き出す。
***
「筋トレは父とやってるけれど楽しくてやってるだけだから。」
動画投稿をしていると何故かみんな楽しくて続いていること前提で話が進んでいく。
じつは裏ではと説明するとさあっと引いていく。
現実の行動のモチベーションって本当にささいな会話で大きく変わる。
遊びか本気かどうかと言われなくなったのは良いけれど「凄い!」くらいは言われたい。
最近見つけた年齢が同じくらいの子がやっているブログにコメントを出来るようになった。
最初は嫌われたらどうしようと思ったから初心者向けの筋トレを教えてイーブンにしようと思っていたらその子はノリが良くていつの間にか打ち解けるようになった。
あくまで
二○二三年で中学三年生。
筋トレ配信を小学生で継続させていた。
受験期に入ったので更新は父のいいつけで一旦保留にしているが勉強のリラックスに筋トレはしている。
誰かに見せたい。
その努力を見せることで安心する視聴者がいるから。
それは普段の学校生活では言われない成果だからこそ。
あとこの筋肉で女子にモテたい。
別にそこまで本気ではないけれど自信がない同年代女子の励みにもなればこの生きづらい世界でも少しだけ明かりを灯せると考えたかった。
勿論現実は思っていた反応とは違ったのだけれど。
そういえば、だいぶ前に勉強を子供達から同世代まで教えている起業家からコメントがあった。
「筋肉の鍛え方について分かりやすく
機会があれば詳しい話をお教え頂けませんか?」
とのことで反応に困ったけれどいざ連絡してみると同い年の中学三年生女子だった。
名前は
いつもは眼鏡をかけているけれどなるべくコンタクトにし、同年代と小学生達と目線を変えて優しく丁寧に学問を教えていた。
そして自分も少しだけ彼女から教えてもらい、もう期末テストもバッチリだった。
出来れば高校受験も教えてもらおうと思ったけれどそこは自分で頑張ろうと武乱は自制した。
『健康意識って筋肉があればあるほど言い訳ではなくて一概には言えないけれど。』
そう話したら「それが聞きたかったのです。」と返事をくれて、健康意識の闇を語ることが出来た。
「そういえば例の配信者である彼がある生物を追っかけてここに来てるらしいんだ。」
「ずいぶん前に格闘技を習って見た目も中身も変わったから武乱君の地元にいる例の生物と戦おう…だなんて行動力の高さだけは見習った方がいいかもしれない。」
「流石にあまりにも危険なことはしないと思うけれどここの生物についてもインターネットや地元でも中々情報がなくて怖いよ。
対抗策もなかったらどこで襲われるか分からないし。」
「遊びの感覚を否定はしないけれどエンタメにされるのは武乱君が
優しく気が利く人だ。
インターネット仲間たちでここに集まれないだろうか。
音輿さんには彼についても少し話していた。
彼女は本震はどうあれ興味関心を持っていてくれているから、ゲームの話題になった時に彼とコンタクトを取ったことも話していたのだ。
「受験が落ち着いたら三人で話してみたいな。
どうしても若くして起業!って肩書きが付くと特別視されがちで暮らしにくくて。
今でこそそこに関しては控えめになったけれど。」
数字があるから、拡散力があるから幸せじゃないことだけは事実なのだ。
そういえば彼は父親との旅行で武乱の地元に来ていると連絡をくれた。
会いに来るとまでは言わなかったけれどあの生物に遭遇しないことを祈る。
しかし二人は知らず知らずの内に、例の生物へと出くわしてしまうことになるのだった。
***古代の力と近大技術***
父とやってきていたのだが自由にしていいと言うことで漫画喫茶で普段はあまりみない漫画を読みまくり、銭湯を楽しんでいた。
もうやってることはおっさんだ。
それでも痩せた自分より少しだけ歳上そうな子も湯船に浸かっていたので一安心。
話しかけるまでは行かなかったけれどインターネット関係ない人間関係も大事にしたいはずなのに流石に気が引けた。
ほーーーんと山!
正確にはここはまだ地方では栄えている場所でいい気晴らしにはなるのだが元々田舎にいる際牛が別の栄えた田舎に旅行して何かを言うのもおこがましかったのでただただ無駄に広い山がいつかなくなるかもしれないと思いながら目に焼き付けていた。
やり取りをしている彼もここに住んでるのだろうか。
嬉しそうに筋トレを語る時と住んでる地域にいる「対策不能の謎の生物」について文字だけのやり取りをしていたらそれだけで怪談が出来るほどの恐れを聞いた。
あまりそういうのは信じていないのだがその生物は学者がまだ調べてない、またはあえて公表してない生き物なのでは?
少しだけ夢がある話でもあるので真相は知りたくないけれどこの山にもしいたらどうしようと妄想してみた。
ちょっと散策するか。
奥までは行かないが山へ入ると観光しやすいように整理されていて一瞬で現実を見せられた。
居ないって。
もし彼がここに住んでいたら居ないと言って安心させよう。
足跡もほぼ靴か人間じゃない獣ばっかりだし。
これはこれでいいんじゃないか、な?
あれ?誰かいる。
まさかかつて話題になった炎上系YouTuber
関西出身者でも使わないコテコテの方言でなんのためにもならない話を天才そうに語る実は武闘派らしい中学三年生男子?
やべえよ。
一番怖いの人間じゃないか。
変に絡まれて拡散されたら際牛の人生は終わる。
体格は際牛の方が大きいがそういう問題じゃない。
昔、背が小さい性悪にいじめられた。
拡散力があるやつなんてなおさら信用出来ない。
逃げよう!
逃げて何事も無かったかのように街の漫喫で楽しもう!
「おい待たんかい!」
ジャンプ力があるのか木を使ってアクロバティックに際牛の前に奴がやってきた。
「な、なん、ですか?」
「自分声も背も実年齢より上に言われるやろ?
やけど分かるでえ。
歳一緒やろ?
」
それはこちらは知っている。
インターネットで拡散されたのを見ているわけだから。
でもこちらの情報を知られるわけにはいかない。
「いいじゃないですか年齢なんて。
じゃあこの辺で…」
バシッと腕を掴まれた。
流石にムカついたので手を払ったのだが、やたら強気で前に出てくる。
「自分俺のこと知らんのかいな?
ったく。
ブームが過ぎた後のYouTuberの嘆き。
新しいコンテンツとなるために地方に出向いて化け物と戦おうとしてここで二日間探してやっと見つけたと思ったら見失って、誰かに捜索を手伝ってもらおうと思ってた時に自分が現れてくれたのに。」
名前だけ知ってるけれど動画を全部見てるわけないだろ。
前提が抜けている辺り彼は人との関わりが悪いみたいだ。
「この世に神も仏も救いも霊もエトセトラいない!
あんた十代で炎上芸をして金を得てきたんだろう?
それにさっきのジャンプ力も只者じゃない。
自分で倒せ!」
「今なんて言ったんや?」
「自分で探せ。」
「いやもう少し前。」
「ジャンプ力がエグい!」
やばい。
もう彼のペースだ。
「いやあ身体能力をほめられるのは初めてやあ。
こういうのは金で叶えても自己満足にもならへん。
つまり誰も言ってくれない!」
怖いよお、
根拠の無い自信と動画にはしない隠し能力を評価された時の嬉しさが相乗された中学生の調子の乗り方は本当に怖いよお。
「もうあんたが退治される側でいいよ。」
「あん?なんて?」
「人手要らないんだろう?
こっちは進路や学業で忙しいんだ。
」
念の為にこの出来事を筋トレの子に伝えておいた。
もしかしたらここが彼の住んでる場所かもしれないし、炎上系YouTuberに山で絡まれるなんて中々ないから。
あと単純に助けが欲しい!
話し合いも変に広がりつつあるなか山の奥からノイズがなった。
鳴き声?
動物か人間の声?
「「アポカリプティック・サウンド!!」」
世紀末の音。
いや、それにしてはまるで実写映画で聴くようなトーンの低い人の声にも聞こえる叫び。
徐々に近づいてくる!
「あっ、な、なんやこれ?」
電流のような光、いやサイリウム?
まさかスーツ?
いや、なんなんだ…なんなんだこれぇぇ?
半透明で長身の髪の長い性別不明のユーレイ?
いや、ハンター?
「が、がはっ!う、うごけへん!」
彼は必死で抵抗し、謎の化け物へ殴打している。
相手が相手とはいえちゃんと訓練された動きで彼は抗戦しているのにビクともしない。
どうしよう。
助けを呼ぼうと考えていると化け者は風圧で際牛を押し倒した。
本当にやばい時って腰が抜けるんだ。
デカくてデブで声も酷いと自虐する際牛はいつも以上に頭の中から浮かぶ言葉で更に苦しめ、視界が真っ暗になりかける。
「大丈夫!」
え?君は?
あれ?女の子もいる!
「やはりここに来ていたんですね。」
「まさか本当にいたとは。
田舎に捨てられた端末が自然現象と一体化して現れた謎の生物。
名前はまだないんだっけ。」
サングラスを外したタンクトップの同い年。
え?
誰?
だが知らない人ではない感覚。
「嫌な予感が的中したよ。
やり取りのアカウントって君だったんだ。」
細いが小学生から鍛えてきたであろう無駄のない筋肉質に品のある眼鏡女子。
俺、漫画の世界に来ちゃったのか?
現代では珍しくない…って珍しすぎるだろ?
恐怖から解放されたと同時に眼鏡女子が手早い操作で写真を撮り、助けを呼ぶ。
YouTuberの彼を手放した謎の化け物は筋トレの子に向かっていく。
サングラスを取っただけなのにやたら攻撃を交わし、近くにある枯れ木を使って攻撃をさばく彼はもうメシアだ。
「こ、こんなやつがいるやと?」
「
怪我を治療します。」
「そ、そっちは起業家の。
なんでや?
あいつと付き合ってんのんか?」
「動かないで!
いくら中学生の回復力でも片手で持ち上げられた後に投げ飛ばされた傷は油断出来ません。」
「は、はい。」
含み笑いだ。
そりゃ彼は筋トレを優しく教えてくれるよ。
そのお礼をちゃんとしてなかった。
個人情報を守るためだけれど。
疲れてきた彼の元へかけつける。
「俺、
いつも筋トレのこと教えてくれてありがとう。」
「こちらこそ。
ゲームのことを攻略とか感想も分からなかったのに親切に発信してくれて。
あと僕の名前は
よろしく。」
サイリウムのような体色を光らせる化け物と自分達二人は迎えあう。
「「追い返してやるよお!!」」
その後のことが分かるようになるのは全力で抵抗したあとのことだった。
***二日後***
「三人とも病院送りかいな。」
後に教えてもらった
結局謎の化け物は逃走し、まるで際牛と武乱が喧嘩をしたような構図で倒れていたのもあって際牛の父親が心配をしていた。
どこで知り合った友達なのかは音輿さんが対応してくれて本当に何から何まで丁寧でゆっくりと寝ていた。
「俺たちいいダチになれそうやな。」
「あんたふっかけた化け物への喧嘩に巻き込まれたこっちの身になってくれよ。」
「まあまあ。
今回のことは多分拡散しないって言ってくれてるから。」
「素質あるでサングラスの自分。」
「ボクササイズは好きだけれどこっちはちゃんとしたトレーニングとしてやってるだけ。
今回みたいな時のために。」
「ありがとう武乱君。」
「俺無視するなや。
百万再生者やぞ?」
バラバラの三人で別にYouTuberの子とは仲良くなるつもりは二人は無さそうだとはたから微笑ましくながめていた音輿。
昔の人間関係も子供の頃はこんな感じなのかな。
インターネットが発達して生きづらい世の中だけれど、自分達四人が組んだらまた希望を持ちたい。
結局あの生物の詳細は別の研究機関に頼むか内緒にするか迷っていた。
だが今は男子に励まされた事実を次の経験に活かそうと病院のベッドで語る男子三人の知らないところでまた何か起こるかもしれない。
バイアスとの折衷案 釣ール @pixixy1O
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます