第54話 二人の予想







  ナギさんとジェニファーさんは、前世で敬愛なるクソオヤジと関わりがあり、色々とご縁があったものの二人は、亡くなった時期の違いもあってか、前世で出会うことはなかった。


 こっちの世界に来てから初めて出会い、やがては親友になった二人は、これまた敬愛なるクソオヤジによって導かれたようなものらしく、それは母ちゃんもヒナコさんたちも同じだ。


 ナギさんとジェニファーさんは、それぞれが鬼神の魔女様と女神様であり、種族や立場的に相反する存在であるにも関わらず、とても仲が良い。


 二人の前世の生まれは、ステイツ(アメリカ)と言う国で、州は違えどもいわゆる同郷のよしみでよく気が合うのだろう。


 そして、ステイツ出身だからなのかはわからないけれど、母ちゃんとは別のベクトルでうるさい。


 美人でセクシーな二人によるメロンの贈り物の押し付けは、着席してからも変わらず、落ち着いて飲めない、とりあえず最高の贈り物に乾杯。


 ここ最近の近況報告をほどほどに、そろそろ本題と行きましょうか。


「で、お前もウィラに呼ばれたんだって? それであれか、お前も面倒だからいったんこっちに来たのか?」


「ナギさん、半分正解ですね。今、母ちゃんはギルドマスターを詰めてるとこですからね」


「ナギの言う通りだったわね。ウィラがクールダウンするまで三人で楽しみましょ? トリー、しばらく会わないうちに一段と立派になったわね?」


「ああ、確かにご立派だ……」


「……ええ、とても」


「ナギさん! ジェニファーさん! どこ見て言ってるんですか!?」


「「「HAHAHA!」」」


 嫌ではないにしても思春期な俺にとっては、御褒美と拷問のせめぎあいだ。


「勘弁してくださいよ、俺も男の子ですからね? そりゃあ美人さんとスキンシップすればそうなりますよ?」


「そうね、誉め上手なのもキャプテン譲りね! でもね、トリー……そういうつもりで言った訳じゃないのよ? あなた、とってもスタイリッシュになったわね?」


「ああ、あいつの悪い部分は受け継いでいないから、最高にクールだよ」


 ま、酒も入っているから、少し大胆になるのも仕方ない……敬愛なるクソオヤジが言ってたけど、母ちゃんやヒナコさんもそうらしいからね?


 そりゃあみんな気が合う訳だよ……それよりもこのままじゃまた話が流れてしまうから本題だ、本題。


「ジェニファーさん、ナギさん、ありがとうございます。それで敬愛なるクソオヤジなんですけど、今はヒナコさんと一緒に、ギルドの牢屋でポーカーを楽しんでいますからね?……もちろん、俺は多分悪いところを受け継いでいないので、ポーカーのテーブルには掛けてませんよ?」


「「「HAHAHA!」」」


「もっとも、賭けの景品にされて、今、ここに掛けている訳ですがね?」


「Wow! Japanese pun!(ワオ! 日本のダジャレね!)」


「「「HAHAHA!」」」


 ああ、ジョークを交えてしまうのは、敬愛なるクソオヤジの悪いところを受け継いでしまったのかもね? HAHAHA!


 三人でひとしきり笑い、ようやく落ち着いたところでナギさんが、俺に目線を合わせてゆっくりと口を開いたことで、ようやく続きを話せそうだ。


「なるほどね……それでトラノスケ、どっちが勝ったんだ?」


「どっちだと思います?」


 ナギさんは少し考えるような仕草をしている途中、ジェニファーさんの様子も気になり振り向いて見れば、彼女は自信満々にこう答えた。


「私はキャプテンが勝ったと思うわ。もちろんメジャーは最高にクレバーよ? だけど、キャプテンは絶対に負けない戦いかたをするはずよ?」


 ジェニファーさんの自信に満ちた回答、その理由を含めて納得できるし、ちゃんと良いところをよく見ていて信頼している様子が、ありありと伝わってくる。


 一方のナギさんはどうだろうか?


 ナギさんの方へと向き直れば、彼女もジェニファーさん同様、どこか納得したような表情を浮かべて、ゆっくりと口を開いた。


「あたしもジェニファーと同じで、順当にカスガだと予想する。あいつは必ず勝てる状況を作り上げてから勝負する。もちろんヒナコもそうだけど、あいつの場数と天性のセンスがあって、もはや段違いだからな」


 本当、普段はあれだけどさ、本当に親父はすごいよ……けれど、その親父がヒナコさんのミラクルで大負けしたと聞いたら、二人はいったいどんな表情を浮かべるんだろうね?


 きっと驚くことに間違いないだろうね───。







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