第52話 流れに身を任せ
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ギルドで色々とやらかした、敬愛なるクソオヤジとヒナコさんの様子を見に来たはずが、二人で楽しくテキサスホールデムを楽しんでいるマイペースぶりに俺は唖然とした。
テキサスホールデムで盛り上がる二人は、俺の存在に気付いてからも相変わらず止める様子もなく、プリフロップの時点でお互いにハンドが強いご様子。
ベット、レイズ、リレイズと賭け金を吊り上げ、お互いに退くことを忘れた果てに、オールインの真っ向勝負を選択。
親父のハンドはハートとクラブのエースのペアが成立していたことで、うまく賭け金を吊り上げるムーブを行った訳だから、勝負事になると強いものだ。
対するヒナコさんは、スペードのエースとスペードの2……フラッシュ、ストレートの可能性もあるからか、分の悪い賭けでも勝負に挑んだ形……いや、むしろヒナコさんはそうだね、ただの狂犬と化している可能性もあるね。
テキサスホールデムで言う、フィッシュにならないことを祈りたいけど、もしかしたらフィッシュ(カモ)を装っているアグレッシブの可能性も否定できない。
お互いオールインなのでショーダウン、フロップで場に置かれた三枚のカードがオープン。
ダイヤのA、スペードの5、ハートの5が公開された時点で、親父はフルハウスの役が成立していた。
続くターンで開け放たれた四枚目、スペードの4が出てきたことで親父とヒナコさんは、冗談を交えて笑い合い、盛り上がってきたその時だ。
ほぼ勝ちの決まった親父が、ワンチャンストフラのハンドだけど、かなり分の悪いヒナコさんに対し、もしも勝てた場合……ああ、勝手に賭けの景品にされた俺は、クソオヤジの提案にノリノリのヒナコさんに抗えず、もうどうにでもなれとばかりに流れに身を任せた。
運命のリバーで開け放たれたカードは……ああ、結果はどうたったかって?
ああ、奇跡のストフラ成立、普段は物静か、時に狂犬のヒナコさんは、珍しく歓喜の声をあげておおはしゃぎ。
そして景品になった俺は、ヒナコさんのお願いを聞くことになり、そのためにギルドを跡にして、ナギさんとジェニファーさんが飲んでいると思われる酒場へと向かったんだ。
ギルドで怒号を轟かせる母ちゃんはどうしたかって?……うん、面倒だから今は放っておく。
巻き込まれるならさ、まだ酔っ払ってるナギさんとジェニファーさんの方がマシだから、ギルドに向かったときよりも足取りは軽やかだよ。
とりあえずさ、ナギさんとジェニファーさんを見付けたら、挨拶をほどほどにして、ヒナコさんの勝利に乾杯したいよ。
それと、明日起こるであろうもっと面倒なこと、囚われの姫君ならぬ、放浪の魔女様、敬愛なるクソオヤジの二人の脱獄を手伝わなきゃいけないんだからさ、俺にも酒ぐらい飲ませろよ!
エステライヒの法的にちょっとフライングだけど、明日やることに比べたらさ、それは些細なことだろ?───。
◇
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