第49話 座敷牢にて
◇
ハローワーク(ギルド)で騒動を起こした俺とクソチビポメ柴のヒナコは、二人まとめて座敷牢のような場所へと収監された。
ハローワーク(ギルド)の職員数人体制で、俺とヒナコを監視下に置いているが、お縄や手錠すらなく、出ようと思えば簡単に出れるぐらいに警備はザル。
銃撃で三人を瀕死に追い込んだ俺と、素手で50人程を気絶、あるいは怪我を負わせたヒナコに対して、温情が過ぎるのではなかろうか?
「カスガ、私たちに手錠をかけたところで無駄。大部屋に入れてもまた同じことの繰り返しだから、お前と貸し切り部屋だと思う」
同じ座敷牢に入り、すっかりと頭が冷えておとなしくなった狂犬改め、かわいいポメ柴と化した、ヒナコの言うことはもっともだ。
今回の件で座敷牢行きを提案したのは、世界で一番美しく、とってもかわいくて賢い愛する嫁のウィラに言われるがままだった。
昔からそうだけど、人目のある静かな空間の中となれば、俺とヒナコはゆったりとした時間を過ごすことが好きだった。
結果として正解と言うのか、ウィラの慧眼は相変わらずだ。
どのような処分が下るのか、それが果たしていつなのかもわからない一方、その時が訪れるまでは暇なわけであり、こっちの世界で再会して以来、あまりゆっくりと話すような機会なんてなかった……先日の件?
ああ、その時とは状況が違うし、今はそんなことをしたら……流石にウィラに殺されるから、お互いにそういう気分じゃないんだよ? HAHAHA!
二人でゆっくりと話をする内容も、今まで聞きそびれていた話題である転生直後のこと。
ヒナコは、新しい世界で初めて出会ったジェニファーと一緒に前世を振り返り、聖職者の夢改め女神となった彼女に懺悔を繰り返し、ようやく落ち着いたあたりでどうするかという話になった。
正直メンタルがボロボロだったヒナコは、記憶を消して新しい世界で心機一転しようか悩んだが、先客であるナギ姐がいたことで記憶をそのまま残した。
ヒナコにとってのトラウマだった、前世の出来事をいつか詫びる機会が訪れるのであれば、記憶を消して生まれ変わるのは筋違いだと考えたらしい。
正直気まずいのもあり、しばらくは放浪して新しい世界で慣らし、時に任せてある程度のメンタルが回復した暁に、ナギ姐と再会するプランを立てたのだとか。
いずれナギ姐と再会するにあたり、最短ルート確定の勇者だけは拒否。
勇者と魔女では、悲しいすれ違いになることは想像に難くないからね。
また、ヒナコにとって、不可能に近いけれど唯一持てる希望として、彼女の愛する祖母と再会したいという願望もあってか、最終的には魔女として君臨するのが、最もベターであると判断したことで、『放浪の魔女』として新しい世界へと旅立った訳だ。
ナギ姐と再会したときは、喜びもあったけれど前世のことがあり、複雑な心境でとっても気まずかったらしい。
最終的に感極まって泣きながら詫びたヒナコだったが、ナギ姐は笑って赦したそうだ。
ナギ姐らしいっちゃナギ姐らしいし、それからと言うもの、行動を共にする機会も多くなったのだとか。
前世でもナギ姐とウィラ、それからカズサさんにめっちゃ懐いていたからね。
こっちの世界で全員と再会できたこと、あとはジェニファーやグリーンティ等の友達も出来たことで、ヒナコはボッチを卒業したって訳だ。
もっとも、ヒナコにとっては、未だに愛する祖母との再会を果たせていないこと、PTSDとの長い付き合いは終わっていないことについては、不老の魔女らしく時に委ねる他ない───。
◇
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます