第46話 鬼神の魔女と女神の休息
◇
ジェニーが転生者相手の女神業務を終え、自由の身となった彼女と共に下界へ降りてまずは一軒。
今日も愛するダーリンと再会することも敵わずに空振りだったし、ヒナコとカスガがトラブル起こしているギルドを避けて、あたしはジェニーとゆっくり一杯傾けたいんだ。
あっちにはウィラもいることだし、例えカスガが発砲しようとも上手いこと場を納めてくれていることだろう。
ダンジョンで悪ノリしたあたしもそうだが、出頭する必要に迫られるのはせいぜい明日あたりだろう。
根拠は勘、少なくともダーリンと再会したいという淡き期待よりはあてになるさ。
今は酒のアテと共に、ジェニーとグラスを傾け、日々の疲れを流してしまおうと言うわけだ。
「ナギ、本当に今日は行かなくていいのかしら? メジャー(ヒナコ)とキャプテン(カスガ)がちょっと心配よ?」
「ウィラのことを心配してないってことは、あたしと同じ考えなんじゃないか? ジェニー、今、あたしたちがギルドに行ってみろよ?……余計面倒なことになるぜ?」
「……そうね、ナギ。明日に響かない程度、楽しみましょうか」
「ああ、ウィラに怒られない程度にね?」
「まだ怒っているときの方がマシよ?」
「そうだな、ウィラがスマイリーフェイスにならないように祈ろうか? ああ、ここに丁度女神様もいることだしな?」
「そうね、祈るのはいいけど、その時にはもう手に負えないわ?」
「「HAHAHA!」」
流石の女神様であっても、新しい世界で元同僚だったウィラの怖さをよくご存じのようで、ウィラの呼び出しに直ぐ様応じないしたたかさを身に付けているようでなによりだ。
当然、あたしもそうする……心臓に毛が生えていて、肝が据わっているウィラが、子供を産んで育ててから更に磨きがかかり、誰も逆らえないぐらいにパワーアップしているんだぜ?
クレイジーにも程がある、メンタルお化けのカスガでさえも尻に敷かれるんだからさ、今から素直にあたしとジェニーが介入しようものなら、火に油を注ぎかねない。
ここはカスガに全てを任せて、クールダウンして落ち着いた頃合いに合流すればいいだろう。
「ナギ、キャプテンはともかく、私はメジャーの方が心配よ?」
「そうだな、お前が一端の女神になりたての頃だったっけ? あいつと出会ったのは」
「そうよ、今は大分落ち着いたけれど、メジャーが転生してきた直後は、本当に危なっかしいというのか、触れたら壊れそうなぐらいにメンタルがやられていたのよ? あの時、彼女の記憶を消すべきか、悩んだぐらいにね?」
「あー、気持ちはわかるけど、あえてそうしなかったジェニーの慧眼に感謝しているぜ?」
未だにジェニーが思い悩むぐらい、ヒナコのメンタルが危うかったのも事実だけど、上手いことあたしのところへと導いた女神の気まぐれのおかげで、ヒナコと再会してわだかまりは解けたんだ。
あたしはヒナコのことは一切恨んでいないと言えば、嘘にはなるけど……誰も悪くはないんだ。
あれはあたしとカスガのミスで、ヒナコは忠実に、恐ろしいぐらいに正確な仕事を成したはずだったんだ。
それにさ、未だに愛するダーリンと再会出来ない点を除いてさ、あたしはジェニーと友達になれたし、あいつらとも再会出来たことで第二の人生を楽しめているんだ。
あたしが寂しいと思う気持ちは、単なるエゴだ。
新しい世界で悠々自適な引退後の冒険者ライフを楽しめている以上、幸せであることには変わりないだろ?───。
◇
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます