【幕間】それぞれの平和な異世界スローライフ
第43話 ナギサ・コウサカ・イナは、今日も愛するダーリンと再会できない
◇
地上で騒ぎを起こしているカスガたちは、あまりにもめちゃくちゃな方法で事を納めたらしい。
色々あって、ギルドで暴れるヒナコはわかるけどさ、昔の地上屋みたいにダンプカーで突っ込もうとしたカスガ、お前は最高にグレイシー過ぎてブレーキ役なんてさ、ウィラにしか務まるわけねえだろ?
全く、前世でもこっちでもカスガのことを、あたしの都合で利用させてもらっている以上は、あれこれ言える立場じゃあないけどさ、ちょっと甘やかしすぎなんじゃないか?
しっかり手綱を握るときは握るけど、カスガに対して甘過ぎるのは、心底からベタ惚れしているお前らしいよ。
ま、ウィラが駄メンズ製造機なのもあるけど、カスガもちゃんとしているときは、驚くぐらいにちゃんとしているし、愛する女性に対しては誠実そのものだし、最高の男であることに間違いないからそれでいい。
もちろん、ウィラも自分に自信があるから浮気するカスガを放任しているし、最終的にカスガはウィラを選ぶこともわかっていることだからね……で、あたし、ナギサ・コウサカ・イナにとって問題なのは、愛するダーリンを尋ねてジェニーのところに来てもさ、未だに再会を果たせないことなんだよ。
「……ナギ、気をおとさないでちょうだい? 信じていれば、いつか報われるかもしれないわ……保証はないけど」
「わかってる、ジェニー……あたしも幸運な方だけどさ、カスガのようにはいかないさ? あいつはさ、こっちの世界で報われて当然なぐらい、前世で辛い半生を送って来たからな」
「そうね、キャプテンのことを知れば知るほど、どうしてあそこまで辛い目にあっているのにも関わらず、神様を信じようとすらしないし、すがりもしなかったのか不思議よ?」
「あいつはいつ応えてくれるかわからない神よりも、自らの手で運命を切り開いた……それだけに、あいつの諦めない心、芯の強さにお前も惹かれたんだろ?」
「……そうよ、だから今でもキャプテンのこと、大好きなの……愛しているわ……だけど、それだけに前世の最期だけは、絶対に許せないわ?」
「敬虔なクリスチャンだけど、カスガだけは特別だろ?」
「もちろんよ!」
あたしはさ、定期的にジェニーのところへ尋ねては、ダーリンが来てないか、あるいは家族の誰かが来てないか、毎回世間話に講じる程度のことばかりでやきもきするけれど、信じていればいつか報われるかもしれない。
今日も空振りだったけどさ、あたし、コウサカ・ナギサ・イナは、いつか報われる日が来ることを信じている。
こっちの世界ではさ、あたしは不老だから最高に綺麗なまま、ダーリンのことを出迎えられるから……待たせた分のツケは、高いぜ? HAHAHA!
「ナギ、今日は業務終了よ。ウィラも呼んでいるから、しばらく転生者の受付は休業ね」
「ジェニー、今日もお疲れ。あたしを散々待たせているダーリンもさ、少しぐらいあたしらのワガママに付き合わせても文句ないだろ?」
「そうね、でもナギ……最愛のダーリンは、どこかのキャプテンと違ってあなた以外にあり得ないみたいよ?」
「……当分こっちに来ないか、残念……少しぐらいはさ、男として人生を楽しんで欲しいよ」
「ナギ、あなたより魅力的な女性は、彼の生きる世の中にはいないわ?」
「それは光栄だね?」
「私たちはウィラの施しに感謝するしかないわね」
「「HAHAHA!」」
ま、そんな訳であたしは、今日も新しい世界を楽しんでいるのさ。
ダーリン、あたしはいつまでも待ってるからな?
退屈しのぎをしながらね?───。
◇
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